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けんかっ早いけど人が好き Vol.72

今年も米を作ります

今年も米作りの季節がやってきた。小学生のときからずっと米作りは田植えから始まると思っていたけれど、本当は田んぼの土を作るところから始まる。前年、稲を刈り取ったあとの田んぼを、また田植えができる状態にもどすのである、ということを拙著「お米ができるまで」を書くにあたりうおぬま小岩農園さんで修業(取材)させてもらって知った。田んぼづくりの代掻きは、トラクターで行う。重機好きにはたまらない光景である。

燃える男の赤いトラクター。女も萌えます!

「うひょー、かっこいいー!

と盛り上がり、その重機愛の炸裂っぷりを存分に原稿に反映させたら、編集担当さんに「長い!」とばっさり切り捨てられた。今となってはいい思い出である(遠い目)。

取材後も小岩農園さんとの交流は続いており、毎年、この時期になると播種に参加させてもらっている。パレットに種をまく作業だ。パレットのまま育苗して田んぼに植え付けるのである。そう考えると、代掻きも播種も育苗もなく田植えから教える小学校教育は、ずいぶんはしょりすぎではないか。いいのかそんなことで。いや、教わったけれど私が忘れているだけか。なんたって遠すぎる昔の話だし。

パレットへの播種は今やオートメーション化されている。ベルトコンベアで進む播種機にパレットを置くと、土を入れ種をまき、ふたたび土で覆い水をかけるという作業を自動で行ってくれるのだ。土と種をその都度補充すれば延々と続けて作業ができ、今年は二千枚という過去最高のパレット数を記録した。すばらしい。私もこの新記録樹立の一員になれて満足である。

ところで、数回行われる播種のうち一回でも参加すると、出来上がったすべての米を「私の米」と呼ぶことが許されている。ちなみに私の米は、全日本お米グランプリをはじめとする数々の賞を幾度となく受賞する優秀さだ。水見も草取りも稲刈りもまったく関与していないけれど、私の米は私の米なのである。

小岩農園さんでは今年、ぴっかぴかのトラクターが新調されていた。くうう、動かしたい! 来年は代掻きから参戦か? 米農家にはトラクター、田植え機、フォークリフト、ショベルカーと、さまざまなマシン(!)がそろっている。重機好きには、夢のような世界だ。転職するなら米農家だな。

2024515日号掲載)

岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)

神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『法律がわかる! 桃太郎こども裁判』(講談社)