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キャニコム、カッコいいマシンで高能率草刈機を製造

投稿日時
2025/05/15 09:00
更新日時
2025/05/15 09:00

製品価値を飛躍的に向上

福岡県南東部のうきは市は「フルーツ王国」として知られる。いちご、ブルーベリー、ぶどう、柿......と一年を通じて多様な果物が栽培される。ここにフルーツと結びつきの強い、創業77年のキャニコム(1948年創業、社員330人)がある。国内外に向けて製造するのは草刈機(売上高比率4割)と農業・林業・土木建設などの産業用運搬車(同6割)。55型式・200仕様を揃え、農機販売店やホームセンター、レンタル会社に販売する。海外でも評判がよく生産台数のうち約半分は海外向けだという。

複合加工機「TruMatic 6000 fiber」の前で草刈機「フルーティまさお」に乗る包行良光社長

製品名が独特で毎年ネーミング大賞を受賞している。草刈機では、四輪駆動で抜群の刈取能力をもつ「フルーティまさお」、40度前後の傾斜に対応するラジコン式「アラフォー傾子」など。前者は内閣総理大臣表彰第6回ものづくり日本大賞で優秀賞を受賞するなど、れっきとした高機能製品だ。

それらを製造する演歌の森うきは工房場(20218月竣工、工場広さ73×120㍍)にはトルンプのパンチ・レーザー複合加工機、ベンディングマシン、2Dレーザー加工機、自動レーザー溶接装置が並ぶ。特に自動材料供給装置とワーク搬出装置に接続されたパンチ・レーザー複合加工機「TruMatic 6000 fiber」は、絶え間なく高速加工で稼働しており、次々と専用台車に自動仕分けしている。

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演歌の森うきは工房場(福岡県うきは市)。多数のトルンプの板金加工機が稼働している。

「この複合加工機を設置するためにこの工場をつくったようなものだから」

包行良光社長はそう話す。「人手不足もあって生産能力の高い加工機を導入する必要があった。価格で選ぶなら他にも選択肢はあるが、当社は加工スピードに重きをおいている」と続ける。

同社はこの工場以外の生産拠点として、同じ市内に機械加工・溶接を担ううきは本社・工場、中国江蘇省にも生産拠点をもち、草刈機シリーズで年に約4千台(うち国内向けは2800台)を製造する。

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TruBend Center 5030」でのR曲げ品質が製品デザイン・品質を支えている。

■使う人間もスマートに

同社はトルンプ製マシンを導入するにあたり2017年から実に2年にわたり検討を重ねた。その結論に至った一番の決め手はなにか。

「投資に見合う加工スピードをもつ。また、技術紹介動画を見て、これが実現できるなら導入しなければ、と決断した」

さらに包行社長がつけ加えた選定理由は他のユーザーの見方と少し違う。

「白とブルーをを基調としたデザインに惚れた。当社は自社製品の外観品質にも高い配慮をしているのでそれをつくる工場もスタイリッシュでありたい。そのマシンを使って働く社員もスマートに見え、モチベーションにもつながる」

包行社長は社員をワクワクさせて働き甲斐のある職場にしたいという。とはいえ新規導入となるマシンを扱うことに心配はなかったのだろうか。

「多少の不安はあった。日本の湿気に耐えられるか、高い性能を使いこなせるか。でも結局はこのマシンでビジネスをより成長させたいという思いがはるかに勝った」

■設備投資が社員教育に

キャニコムがいま最も販売に力を注ぐのは冒頭で紹介した「フルーティまさお」だ。19インチ大径タイヤが生み出す最高時速142㌔メートルは業界一のスピード(他社製の多くは時速10㌔メートル前後)で果樹園の複雑な地形もすいすい進む。小回りの利くステアリングで幹周りまで刈り取ることができる。「手作業で行うことの多い部分を『まさお』なら刈り取れ、その分、草刈りが早く済む。草刈り作業を『フル』におこなって、午後は爽やかな『ティー』タイムを楽しむことができるようにと、製品名にも願いを込めた」

設備投資の効果は生産の効率向上だけではない。製品価値を高め、販売価格を高めることにも成功した。同社の草刈機は従来30~40万円の価格帯が多かった。それが今や100万円を超えるものが中心だ。「ユーザーニーズが変われば、その変化に合わせた製品を自社開発し、ユーザーのニーズに迅速に応えている」。これによりこの3年間の売上高は飛躍的に伸びているという。

これにはトルンプの自動プログラミング装置関連が大きく関わっている。図面取り込みから最適なパーツネスティング、そして自動NCプログラミング生成、作業指示書のモニターへの展開。これらが生産効率・材料歩留り率の向上、ひいては保有材料節減に大きく寄与している。

「若手社員でも3日で1人立ちできる。個人の技量に依存せず、誰でも同じように高品質のアウトプットができる環境を整えている」そうだ。

同社はいま55カ国に販売実績があり、2024年度は海外販売比率が57%と初めて国内販売を上回った。

「設備投資は『社員教育』の新しいかたちでもある。今後も常に1番を追求し、100カ国で通用するモノづくりを目指す」

(日本物流新聞2025515日号掲載)