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かねよし、折り紙のように切る・曲げる・つなぐ

投稿日時
2025/04/11 09:57
更新日時
2025/04/11 10:03

受注翌日には8割納品

「鋳物のまち」として知られる埼玉県川口市。西川口駅から徒歩15分ほどのかねよし(1947年創業、社員45人)を訪ねた。工場に入ろうとすると長さ5㍍ほどのトラックが先に入ってきた。

「この地域には鋼材問屋が多く、材料だけでも当社は50、60社と取引きしている」

吉田竜一社長は言う。工場は整理整頓が行き届いている。保有する設備や鋼材はとても多いのだが、レーザー加工機の上のスペースに付帯設備を設置したり、随所に材料棚を置いたりして空間を有効利用している。材料棚の各段に状態・サイズ・厚みが記され、各種鋼材が整然と収納されている。

プレスブレーキが集まる本社工場の一角

トルンプ製のレーザー切断加工機6台、プレスブレーキ6台、溶接機2台の計14台を保有している。昨秋導入した24キロワットのファイバーレーザー加工機(東日本で第1号)は最大板厚40ミリに対応する。吉田社長は「1日に約500種類の注文が300社から入る。その8割を翌日には納品している」とさらりと話す。顧客数は約1500社と10年前の2.5倍に。板金加工して納めるのは手のひらサイズから3m長さまでの1ロット1〜1000個品。20245月期の売上高は約13億円。「切って・曲げて・つなぐ――折り紙と同じだが、どれひとつ欠けてもできない」と3種の加工機を駆使する理由を話す。

同社は1947年、鋼材販売店として創業。ほどなく板金加工を事業に加えた。即納をセールスポイントにするため広いスペースが必要で、本社工場のほか同じ川口市内に2022年に青木工場(主に溶接を担う)を開設し、新工場(主に厚板加工)は近く稼働する予定。顧客の業種は医療機械、食品機械、配管部品、建築関連、工場設備と幅広い。自然に広がったというよりは意図的に幅を広げたと吉田社長は言う。

「ひとつの業種・取引先への依存度が高まると、自社でコントロールできない状況が増える恐れがある。あえて幅を広げ、取引が比較的多い会社でも全体の5%程度に留まるように注意している」

■常に1つ先を行く

板金加工設備の大半はトルンプ製。当初、同社は他社製のレーザー加工機を2台使っていた。2003年に3台目を導入するにあたり加工スピードの速さに注目しトルンプ製を導入したのが初めだ。その後、継続してトルンプを選んだのはなぜか。

「トルンプは加工の速さ・品質で常に1つ先を進んでいる。フレームが一体成形で剛性が高いので長く使える。速さは機械そのものの動きだけでなく、たとえば曲げ加工での段取り替えなどにも当てはまる。つまり生産性が高い。また、トルンプのマシンで製造した製品の品質は、設計寸法はもちろん、仕上がりが美しいことも特長だ」

5面【先駆け板金業】かねよし(トルンプユーザー)折り紙のように切る・曲げる・つなぐP2笘・NZ69307.jpg

R曲げ自動加工など多彩な曲げが可能なプレスブレーキ「TruBend Center 5030」(テーブル寸法3050mm、最大板厚3.2mm)を紹介する吉田竜一社長

吉田社長は次々と長所を列挙する。「コンパクトさも特長。元々の設計思想なのだろうが、無駄なスペースを持たない。これが動きの無駄のなさにもつながっているのかもしれない」。分析が鋭いのには理由がある。吉田社長は見たい技術展があれば国内外を問わず、自ら視察する。ドイツ・ハノーバーで開かれる「EuroBLECH」(国際板金加工技術見本市)にはここ23回連続して訪れた。トルンプブースのオペレーターに「生産性向上、コストダウンにつながるのか」「スペース対効果はあるか」「新機能がどのようなメリットを生み出せるのか」などを直接たずねて会話を重ね、自社の将来を見据えた情報収集をおこなったという。

■ミラノサローネに初出展

同社は新しい取組みとしてアートを事業に加えた。中でも代表的なのは、板金加工だけで生み出した椅子「orisu」だ(表面処理は近隣の加工会社と連携して対応)。単一金属(ステンレス、銅、真ちゅう)によるシンプルさと丈夫さ、金属光沢をもつ。得意の切る・曲げる・つなぐ――を最終製品として目に見える形にした。orisuは初出展の世界最大級の家具・デザイン見本市「ミラノサローネ」(48~13日、イタリア・ミラノ)に出品中だ。

アートを採り入れたことで「板金加工を施すものの見た目の美しさをより意識するようになった」と吉田社長は感じている。

「最終製品やそれに近い製品に携わるようになったことで、使う人の見方や意識に注意をすることが増えてきている」

orisuは近く販売する運びにあり、ヨーロッパのマーケットも視野に入れているという。

5面【先駆け板金業】かねよし(トルンプユーザー)折り紙のように切る・曲げる・つなぐP3笘・NZ69238.jpg

同じ形のパーツからできた、光り輝くチェア「orisu」。折り紙のように金属を折って作られている。



(日本物流新聞2025410日号掲載)