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ベテル、医療向け自社製品で世界目指す
- 投稿日時
- 2025/04/10 13:33
- 更新日時
- 2025/04/10 13:41
右肩上がりの成長続ける金型メーカー
[プラスチック金型製造]
茨城県石岡市
電設資材、インテリア向けOEM製品の開発にプラスチック金型事業、熱物性計測事業、ギヤードモータ事業など、多岐にわたる事業を手掛けるベテル。1973年の創業以来、順調に成長を遂げてきた同社。だが、リーマンショックを契機に転機が訪れた。

ベテルが開発したプラスチック先端チップ
同社の鈴木英利也常務が述懐する。
「OEMの生産や発注された金型を作って売るだけでは景気に左右されやすく、会社として成長するにも限界があると痛感しました。そこで、既存のリソースを活かしたオリジナル製品の開発を目指しました。まず取り掛かったのは、自社の強みを知ることでした」
2001年には医療用具製造業の認可をするなど、メディカル分野向けのプラスチック金型、成形品を手掛けていた同社。そこで培った技術をさまざまな展示会に出展したところ、予想以上の反応が返ってきた。
「思った以上に当社の技術を高く評価してくれる企業が多数ありました。特に歯科治療向けに開発したプラスチック製の先端チップには多くの引き合いがありました。改めて、自社の強みは設計、開発力とそれを実現できる精密な金型づくり、最適な成形品の製作にあることを気づかせてくれました」(鈴木常務)
(写真左より)鈴木英利也常務、篠塚勝義次長
プラスチック製の先端チップは主に歯科における歯周病治療時と根管洗浄時に使用するもの。同社が開発した最も細い先端チップは外径わずか約0.3mmと極細で、なおかつ先端部の横穴から治療薬や洗浄液の注入も可能にしている。材質は柔軟性に富むポリプロピレン製で、湾曲した狭い根管でも傷つけずに作業を行える。
リーマンショックで大きく落ち込んだ同社だったが、従来のやり方に一石を投じるエポックメイキングな製品の開発を契機に、現在はリーマンショック前の2倍近い売り上げを計上。さらに昨今では、海外への製品展開も行っている。
「2年前からBMC(ベテルメディカルコンポーネンツ)というブランドを立ち上げて、海外市場での拡販を推進しています。海外では歯科領域の中でもジャンルによる専門医がおり、専門分野における治療時に先端チップは大きな効果を発揮します。実際に海外の展示会では高評価を頂いており、実際に商談が進んでいるものもあります」(鈴木常務)。
■他所が出来ないなら…
ベテルが開発した先端チップだが、もともとはクライアントが「どこの金型屋さんに行っても出来ない、と断られる」という難易度の高い医療部品の開発を「ウチなら」と引き受けて実現したものがベースとなっている。他社が出来ないものをなぜベテルが出来たのか。同社金型製作部の篠塚勝義次長が話す。
「金型は、どのような構造や機構にするのかがいちばん大事な部分だと思います。最初から無理だな、なんていう先入観を持ってしまうと出来るものでも出来なくなってしまいます。その点、当社はアイデアや創造力豊かな設計者や技術者がおり、『出来ない』ではなく『なんとか出来るんじゃないの?』と考えるポジティブな社員が多いんです。そこに、ベテランの技術力やノウハウが加わって、他社が敬遠するようなものでも、しっかりとカタチにすることが出来ているのではないかと思っています」
これら医療機器開発で培った精密加工技術や、熱物性計測の実績を買われ、昨今では自動車向け部品関連の仕事も急増しているという。
「もともと自動車関連はほとんどやっていなかったのですが、金型も作れる、成形技術もある、熱関係の知見もある、ということで声をかけて頂きました。当初は金型だけを納入していたのですが、近年では試作成形品の受注もかなり増えています。またお客様のニーズに応えるべく、新たに100㌧クラスの竪型成形機を導入し、製品の大型化にも対応できるようにしています」(篠塚次長)
実際の加工現場を見てみると、ハイエンドのMCからAIによる加工最適化が図れる最新の放電加工機などがズラリと並ぶ一方、昔ながらの旋盤、フライス盤もまだまだ現役で活躍している。働き手もベテランから若手までが和気藹々と作業しており、機械も人も新旧バランス良く稼働している様子が窺い知れた。
「機械代が高いので躊躇してしまいがちですが、金型づくりには設備投資も重要だと考えています。実際にお客様も入っている設備で何が出来るのかを見極める方もいらっしゃいます。ですので、今後も必要なところにはしっかりと投資していきたいです」(鈴木常務)。
先端チップの先には極小の穴が開いており薬剤の注入や洗浄を可能している
(日本物流新聞2025年4月10日号掲載)