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二九精密機械工業、フェムト秒レーザーで医療分野に参入
- 投稿日時
- 2025/03/28 17:18
- 更新日時
- 2025/03/28 17:25
超短パルス機3台を昼夜問わず稼働
[精密部品の切削・レーザー加工、組立]
京都市南区
2mm厚の透明樹脂に施した0.3mm幅の血液検査用流路や1辺0.3mmの六角形貫通穴で蜂の巣状にした0.5mm厚のジルコニア(歯科治療や人工関節などに使われる靭性の高いセラミック)。いずれもフェムト秒レーザー加工機で加工したものだ。
フェムト秒(1000兆分の1秒)の超短パルスで発振し、ワークの周囲に熱が伝わる前に加工を終える同機の導入で差別化を図る受託加工会社が見られるようになってきた。二九精密機械工業(1917年創業、社員283人)もその1つ。同社は主に精密部品の切削加工(八木工場=京都府南丹市)と特殊金属の小径パイプ造管、レーザー加工(京都工場・R&Dセンター=京都市南区)を行う。加工部品の納入先は分析機器、半導体装置部品、医療機器メーカーがほぼ3割ずつ。このうち半導体、医療向けの伸びが大きい。

京都工場・R&Dセンターの恒温室に導入したフェムト秒レーザー加工機(奥)とピコ秒レーザー加工機(手前)を紹介する開発部の西川秀樹次長(左)と製造部レーザー加工技術担当の本台優希氏
JRの西大路駅から徒歩15分の京都工場・R&Dセンターを訪ねた。2台のフェムト秒と1台のピコ秒レーザー加工機(ピコ秒=1兆分の1秒の超短パルスで発振)を設備し、1ロット1~10個の医療機器部品の試作を中心に量産にもつなげる。「これら3台の超短パルスレーザー加工機の稼働率は100%に近く、長尺パイプ材の加工に対応したピコ秒は夜間も稼働している」(開発部の西川秀樹次長)と言う。
フェムト秒を導入したのは、切削加工では対応できない医療分野の微細な仕事に対応するためだ。「フェムト秒は最小10ミクロンの穴やスリットを加工でき、体内で使用される医療処置具で扱われることの多いニッケルチタンをはじめ、樹脂、セラミック、ステンレスなど材料を選ばず、狙いの±5ミクロン程度の精度に追い込める。3Dの形状も物理的に大きな力をかけずに行える」
二九精密機械工業が試作した麻雀牌の13分の1のスケール。銅板表面のポリイミド部分のみを剥離除去した。(右側の写真は拡大した麻雀牌)
最初のフェムト秒は国の補助金を活用し、2017年に導入。2台目を昨年9月に導入したのは「仕事が忙しく生産が追いつかなかった。また加工機に不具合が生じた時にお客様にご迷惑をかけないため」と人事総務課の光森健司課長。どちらもガルバノスキャナーヘッド付きで3次元加工に対応した欧州製。老舗の受託加工会社だから治具づくりは御手の物で、フェムト秒の加工にはそれを使って冒頭のような加工をこなす。
ピコ秒(2023年12月に導入)はフェムト秒ほどではないがワークへの熱影響を大きく減らせる。医療分野の拡大とともに、直径1mm以下の小径パイプ加工の試作受注が増えており、その対応力強化のため「工場にスペースさえあれば2台目を購入したい」と西川次長は言う。
■東南アジアに商機
同社には2年ほど前からシンガポールやタイなど海外の医療機器メーカーからの注文が増えた。「医療処置具は欧米メーカー製が多く、体型的に日本の患者に最適ではない。また繊細な手術を行う日本の医師の要望に応える医療処置具が十分とは言えず、ここにビジネスチャンスがある」(西川次長)と見る。
ただ、半導体分野を含め仕事量には増減がある。そこで同社は加工担当者が八木工場と京都工場の2拠点で広く活躍できる体制を構築しようとしている。「切削、レーザー、小径パイプ造管の加工を担当できるオールラウンドの人材を育成していく」(光森課長)のが当面の目標だ。
(日本物流新聞2025年3月25日号掲載)