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信金による脱炭素への挑戦

投稿日時
2025/03/11 15:57
更新日時
2025/03/11 15:59

脱炭素ビジネスコンテスト初開催

預金が約7000億円、総融資が約5000億円、全国に254の信用金庫の中で約60番目の規模。大きな金融機関とは言えない大阪商工信用金庫が、大きなリソースを裂いて「脱炭素」へ取り組むのは多賀隆一理事長の「5年前、孫が生まれまして、この小さな命が暑い大阪の夏を乗り切れるのかなと。子どもや孫達といった次世代のためにも『今を生きる大人の責任として脱炭素をやろう』と心に決めた」との強い思いがある。

大阪商工信用金庫の多賀隆一理事長(右から3人目)、最優秀賞に輝いた「未来のコト」中農竜二代表取締役(同5人目)ほか入賞者と審査員

大阪関西万博・大阪ヘルスケアパビリオンへの中小・スタートアップ企業の出展支援事業「リボーンチャレンジ」にも実施主体として名を連ねる。テーマは「Rethink まちからはじまる、脱炭素への取り組み まちと社会、これからのくらし」とし展示期間は25年5月13日から5月19日、出展企業はウィファブリック、EX-Fusion、F.C.大阪、オプティマス、ゴイク電池、興徳クリーナー、SIRC、中村超硬の8社だ。

この8社以外にも優れた脱炭素への取り組みや、ソリューションを持った企業に光を当てたいと考えた同金庫。「大阪で脱炭素に特化したテーマのコンテストがなかった。各中小企業で実践されている脱炭素の取り組みを披露していただき、横展開してほしい」(同金庫執行役員・山本勝利広報CSR室長)との狙いで初開催されたのが「大阪脱炭素ビジネスコンテスト2025」(OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーションと共同主催)だ。26社から応募があり、一次審査を経て10社のファイナリストが1月27日、大阪産業創造館で公開プレゼンテーション審査に挑んだ。

審査員の松田一敬氏(SARR代表執行社員)が「多くのコンテストの審査員をやっているがこんなに僅差だったのは初めて」という激戦を制し最優秀賞に輝いたのは「未来のコト」による「未来を予測し CO2を削減 環境配慮型省エネシステム」だ。優秀賞はマイクロバイオファクトリー「合成バイオ技術を活用した化学品生産」、特別賞は多田プラスチック工業「段ボール保冷ボックス」となった。

■脱炭素後退の米、日本にチャンス

未来のコトは、省エネと天気予報を掛け合わせた「スマートマネージメントシステム」をプレゼン。これは天気予報を利用し、外部が涼しい時には外気を取り入れエアコンを抑制する自動換気制御を行うもの。同社中農竜二代表取締役は「昨年よりビジネスコンテストに応募してきたが、最優秀賞は初めてだ。脱炭素をテーマにしたコンテストなのでより励みになる。開発も重要だが研究を大事にしており大阪府に自前の研究ラボを開設した。目指すところは海外だ。大阪市、大阪府と二国間クレジットに取り組む予定だ。資金調達は旧来の金融機関のみで行っており、脱炭素ビジネスには金融機関の窓口が有効だ」とした。

多賀隆一理事長は「十人十色の企業の参加を目指した。トランプ大統領の就任でアメリカの脱炭素の取り組みが後退するのは間違いない。その4年間に、日本の脱炭素の技術の発展、市場の拡大を果たせれば逆転どころか大きく世界をリードできる。この絶好のチャンスに、万博も契機に大阪の脱炭素に資するユニコーン企業が出てくればうれしい」とし「脱炭素は一見、商売に繋がらなさそうだが、その会社の個性や付加価値につながる。大量生産、大量消費の古い経済の中で中小企業の給料が上がっていない。脱炭素という付加価値をつけて適正価格で売っていくことがそれを打破する可能性がある。それを支援するのが信用金庫の役目」と話した。

OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーションの田中靖訓代表理事は「通常のビジネスコンテストはピッチ慣れした常連スタートアップ企業が多いが、広くまんべんなく参加者が集まり、審査は僅差となった。様々な企業のちょっとした工夫が脱炭素につながっていくということを象徴するようだった」とした。

(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)