1. トップページ
  2. 連載
  3. 米山金型製作所、医療向け超精密金型の旗手

連載

米山金型製作所、医療向け超精密金型の旗手

ミクロン台加工の最高峰目指す

精密部品加工のメッカ、長野県においてミクロン台の切削加工を実現している米山金型製作所。美容医療、半導体等に使用される直径1㍉以下の針の集合体「マイクロニードル」や医薬品などで活用されている「マイクロ流路」の金型の製作など、微細加工におけるトップランナーとしてひときわ存在感を放っている。

碌々産業AndroidⅡなど微細加工機が多数並ぶ

[微細金型・部品加工]長野県松川町

「このままでは生き残れない」。先代社長の逝去に加え、得意先からの受注減など村松善太郎社長の船出は逆風が吹き荒れていた。それまでは自動車向けや電子部品向けの金型をメインに請け負っていたが、金型製造がアジアへシフトしていく中、価格的にも従来通りの仕事では先細りしていくことは明白だった。「何か付加価値の高い加工を」と辿り着いたのが微細加工だった。

2006年に碌々産業(現碌々スマートテクノロジー)の微細加工機「MEGA」を導入。続けて高精度測定機器や±23℃の恒温室を用意し、微細精密加工への挑戦が始まった。だが、その道のりは決して平たんなものではなかった。

村松社長は「金型製造で培った知見はあったものの、当時、微細加工に関しては技術が確立されているわけでもなく、トライ&エラーの繰り返しでノウハウを積み重ねていった」

村松社長.jpg

村松善太郎社長

自社で積み重ねた技術をマネタイズするにあたり、積極的に展示会に参加した。それも金属加工系の展示会ではなく、医療や半導体関連など自社の加工技術が付加価値として認められる業界にターゲットを絞り出展した。村松社長の読みは当たり、展示会に出展する都度、多くのメーカーから声がかかるようになった。

「展示会への出展により引き合いや案件が急増したが、当社に寄せられる案件は加工難度の高いものが多い。それが結果的に自社の技術をさらに引き上げることに繋がった」と村松社長は語る。自社の技術力向上を視野に入れ、場合によっては無料でテストカットを引き受けるケースもあるという。

■微細加工を支える設備と環境

こうした努力が実を結び、微細加工におけるトップランナーとしての地位を確立。特にマイクロニードルの分野においては他を寄せ付けない加工精度と実績を誇る。

「当社では直径0.5㍉以下の微細マイクロニードルを加工できます。素材もステンレス、難削材や、アクリルなどの樹脂素材のマイクロニードル加工にも対応で、1000本以上のマイクロニードルで、高さのばらつき精度±0.0002㍉以内の加工が可能です」(村松社長)

マイクロニードル.jpg

同社の手掛けたマイクロニードル

これらの微細加工を支えるのが徹底した温度管理を実現する環境と設備、加工におけるソフトウェアだ。加工機は碌々産業(現碌々スマートテクノロジー)のAndroidⅡ、芝浦機械のUVM―450Dといった超高精度微細加工機、ナガセインテグレックスの超精密研削加工機SGC630α、ソディックの放電加工機SP250LAP3Lなど最新のマシンを揃える。

同社でメインに使われている設計ソフトはC&Gシステムズの「CAM―TOOL」だ。金型向けCAD/CAMシステムとして多くのユーザーから支持を得ている同ソフト。村松社長も「他のソフトでは削れないワークも、CAM-TOOLなら加工できるというケースも多く、微細加工には絶対に欠かせないソフト」と語る。

同社では一昨年、事業再構築補助金を活用し、微細成形技術が提供可能な「微細成形ラボ」を設立した。同ラボには様々な射出成形機が用意されており、成形技術の提供を行っている。

村松社長は「微細金型は成形にも高度な技術が必要とされます。金型があっても成形に課題を抱えるユーザーも多く、そこを支援していくことで新たな需要を取り込みたい」と意気込む。

(2024年7月25日号掲載)