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Osaka Metroのエリアリノベーションプロジェクト、空き家リノベで沿線活性化

地域特色活かし、じっくり進める街づくり

大阪を南北に貫く大動脈であるOsaka Metro御堂筋線。梅田やなんば、天王寺といった主要都市を挟みながら箕面萱野から堺市・なかもずまで結ぶ。利便性の良さから居住地としても人気が高い沿線だが、天王寺以南になると乗降客数がぐっと減る。同社のエリアリノベーションプロジェクトは天王寺より南側の「西田辺」、「長居」「あびこ」の3つを推進エリアと定め、沿線活性化の芽を育てている。

東田辺にある戦前の木造5連長屋は、レストランやカフェ、羊毛フェルト教室のアトリエに。地域の人が立ち寄るスポットとなった

「空き家や遊休不動産を約10年間借り受けてリノベーションし、住居や店舗として貸し出します。設計・施工会社もなるべく地域の方にお願いしています」(都市開発事業本部 事業推進課 浦田周兵係長)。間取りや施工の難易度を考慮し、適切な物件を選定。入居者について「なるべく地域交流につながる小商いや趣味や、地域と共に暮らしてくれそうな方を求めています。着工よりも早期に募集をかけるので、設計やデザインに入居者の希望を反映できるのも特長」と言う。

阪南町では戦前の木造長屋を、近畿大学建築学部宮部教授(建築・都市再生デザイン研究室)と連携し「人との繋がりや、住まう人の自己実現が街に還元されるような使われ方を想定して」リノベーション。水回り空間を再レイアウトし、玄関から大きく土間のスペースを設けた。「実は携わった学生の方が気に入ってくれ、シェアハウスとして入居しました。土間はリモート授業を受ける場に。退去された今は、金継ぎ教室をしたいという住民の方が活用されています」

昨年秋には木造5連長屋を事業用地物件としてリノベーション。各区画で異なる味わいを活かし、レストランやカフェ、アトリエなどの店舗や事務所が入った。近くのこまがわ商店街から訪れる人もおり「これまでになかった立ち寄りスポットになってきている」と新たな人流を生み出した。

■地域の特色を丹念に

2018年の民営化により大阪市交通局からリスタートした同社。交通事業のほかに都市開発や飲食事業など、多角的に枝葉を伸ばしてきた。エリアリノベーションプロジェクトは、「駅直結の土地や沿線に用地も所有していないなか、大阪に拠点を置きつつ全国で都市再生事業に取り組まれているサルトコラボレイティヴ・加藤氏や、昭和町エリアの長屋や古ビルの再生・活用を通じてエリアの価値向上に取り組んできた丸順不動産・小山氏といったキーパーソンの方々と取り組んできた」(浦田係長)。一気呵成ではなく、あくまで地域の特色に沿うことを重視する。

「西田辺だったら『くらしの風景』、長居は『NAGAI DAYS』、あびこエリアは『ABIKO wonderland。エリア毎の特色を伝える喫茶店や古本屋、地域店だけのフリーペーパーを発行し、3エリアの構内で配布しています。梅田などの主要駅に置くこともできますが、あえてしていません」という。理由を聞くと、「まずはローカルの購買力を高め、個人事業主さんの体力を蓄えることが重要だからです。じわじわとプロモーションをしていきたい」と狙いを話す。一方で冊子からこぼれた話題や即時性のある情報はインスタグラムで発信する。

「例えば、あびこは実は歴史と多様性のエリア。国際色豊かな美味しい飲食店が多いです」「地域に愛着をもって入居いただき、地域でアルバイトしてくれる学生もおり、ローカルの店を訪れるようになって生活スタイルが変わったという声も聞こえています」

観光や遠出が敬遠されたコロナ禍で、足元の地域の重要性が再認識されたことは記憶に遠くない。魅力を掘り起こしながら地域に根を張る人を増やし、大阪の「大動脈」の沿線活性化に取り組む。 

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(2024年7月10日号掲載)