連載 けんかっ早いけど人が好き/岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
けんかっ早いけど人が好き Vol.123 岩貞るみこ氏(自動車評論/作家)
- 投稿日時
- 2026/06/24 14:36
- 更新日時
- 2026/06/24 14:39
カナダからのポテチ
物の価値はそのものだけでなく、だれからどのように手に入れたかというストーリーで決まる。私なんて推しからもらったものなら、ティッシュペーパーですら死んだときに棺に入れてほしいくらいだ。

先日、仕事仲間からカナダみやげをもらった。小さな袋のポテチである。ポテチは運びにくい。なんたってかさばる。袋には空気がパンパンにはいっているものの、下手につぶせば中身はバリバリと割れる。近場ならともかく、トロントから東京まで一万㌔メートルを超える距離を飛び、さらに自宅からの通勤ラッシュを乗り越えて私にわたしてくれたものである。感激。
さらに話をきくとそのポテチは、とあるすごいイベントの関係者控室に『ご自由に』と置かれていたもので、まあ、それをパクってくるのは褒められたことではないけれど、みんな持ち帰っているような雰囲気だったそうで、私のジャンクフード好きを知るその人はそれを思い出してひと袋、キープしてくれたのだという。
もう、そんなすごいイベントの会場で私のことを思い出してくれただけでも光栄なのに、もうひとつとっても嬉しかった理由がある。
もうかれこれ20年以上前のこと。私が我儘し放題だった頃(今もだけれど)、数名集って行われた打ち合わせのときに彼におごらせたのである。しかも、たっかいアイスティーを。その打ち合わせは、今考えれば自分の飲んだ分は自分で払うのが当たり前だったのに、鼻っ柱の強い勘違い野郎だった私は、「じゃ」とひとこと言ってとっとと帰ってきたのである。ああ、今の私がその場にいたら、頬をひっぱたいて反省させてやりたい。
そのまま時が流れ、彼とは会う機会がなかったのだが、半年ほど前、ある席で再会することになった。反省していた私はこのままでは会えないと思い、ちょっとしたお詫びの品を用意して謝罪とともにわたした。優しい彼は恐縮しながらも受け取ってくれたのだが、許してもらえたかどうかはわからなかったのだ。
でも、今回のこのポテチ。こうしてはるばる私のために届けてくれたということは、きっと許してくれたのだ。積年の謝罪の念が消えてなくなった気がした。ちょっとしょっぱいポテチが、とてもおいしかったのは言うまでもない。
(日本物流新聞2026年6月25日号掲載)
岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)
神奈川県横浜市出身。自動車評論のほか、児童ノンフィクション作家として活動。国際交通安全学会会員。最新刊に『こちら、沖縄美ら海水族館動物健康管理室。』(講談社)