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扉の先97/廉価ヒューマノイドを市場投入「ヒトの代わり」が務まる時代へ
- 投稿日時
- 2025/07/11 14:32
- 更新日時
- 2025/07/11 14:36
DOBOT JAPAN
「AIの進歩は目覚ましく、普段の仕事や日常生活にも欠かせないものとなりつつある。ロボットの世界においては、半年でAIによるブレイクスルーが起こっている。以前はロボットにはティーチングが必要だったが、今はもうAIを使ってロボットの動きを制御できる時代。人の動きも模倣できてしまう」(DOBOT・ジェリー・リュウCEO)

DOBOT「Atom」
6月27日、中国ロボットメーカーのDOBOT日本法人による新製品発表会が行われた。その目玉となったのがヒト型ロボット(ヒューマノイド)の「Atom(アトム)」だ。親日家でもあるジェリー・リュウCEOが日本のアニメに登場する心優しいロボットにちなんで命名したという。
Atomは身長165センチ、重量65キロ。直立二足歩行で最大5㌢の段差を乗り越えられる。アーム部分は左右とも7軸で構成されており、ハンド部分は12軸。独自の揺れ抑制技術と200Hzの高周波制御で、工具の使用や繊細な作業もスムーズに対応できるという。
頭部にはフルHD対応の双眼カメラ、深度と色を認識するRGB-Dカメラ、3DLiDARを搭載し、周囲の空間情報を取得し、移動を含む様々なタスクをこなす。さらにインテルのCorei9と256ビットのGDDR6メモリを搭載。処理性能1500TOPS(=Tera Operations Per Second=1秒当たりの演算性能。AI処理性能の指標)のAIも搭載し、自律学習も可能にしている。
会場ではエントランスからステージまでの約30㍍を歩行。直角のコーナーを難なく曲がり、ステージ前ではUターンを行ってみせた。
ジェリー・リュウCEOは「当社はロボットの開発に累計で約200億円を投資してきた。2024年からはAIとロボットを組み合わせ、人の動きを真似させてタスクを実行する開発に取り組んでおり、ほぼ完成に近づいている」と自信を見せる。
■すでに導入企業も
未来学者で起業家のピーター・ディアマンディスは自身のポッドキャストにおいて「2026年までにヒューマノイドは洗濯、掃除、皿洗いといったタスクをこなせるようになる。そして2040年までに世界で100億台ものヒューマノイドが存在するようになり、その労働コストは1日あたり10ドルにまで低下する可能性もある」としている。
その根拠として「ヒューマノイドは自動車のように当たり前の存在になる。価格が3万ドル(約450万円)だとしたら、月額300ドル(約4万5000円)程度で利用可能になるはずだ」とした。
これまでヒューマノイド開発はテスラやフィギュアAI、川崎重工業など日欧米の企業が一歩先を行っていた。しかし、現在のヒューマノイド開発における中心地は中国だ。家電同様、すでに産業用ロボットはコモディティ化しつつあり、熾烈な価格競争に晒されている。ヒューマノイドのジャンルにおいても、欧米企業の1体数千万円に対し、遜色ない性能で数百万円で入手できるものも出てきている。
「キックボクシングや宙返りなど、運動性能を売りにした中国・Unitree(ユニツリー)の小型ヒューマノイド(身長127㌢体重35㌔)はすでに日本国内でも300万円を切る価格で販売されている。さらに設立からわずか10カ月で二足走行ロボットを開発した中国・ENGINEAI(エンジンAI)は約80万円でベースモデルを発売するという。また二足歩行ではなく、安定感とコストに優れるホイール走行にシフトするメーカーも出始めており、今後一層価格競争が激しくなるだろう」(DOBOT代理店)
今回、DOBOTが発表したAtomはもっとも廉価なモデルで20万元(約400万円)。上位モデルでも欧米メーカーを凌駕する価格という。
「すでに国内の製造業に複数体納入している。研究目的での導入が大半だが、ヒトの代わりが務まり、導入コストが人件費を上回る目処が立てば採用する企業は爆発的に増えると見ている」(前出のDOBOT代理店)
ジェリー・リュウCEO
(日本物流新聞2025年7月10日号掲載)