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扉の先86/超低床と超シンプルの2台を開発

GEクリエイティブ、シンプルなAMRにこそ商機と勝機 

昨年10月の「名古屋スマート物流EXPO」で初披露された2台のAMRが、その場で50件近い引き合いと、すぐに注文も得た。1台は国内最低床クラスという高さ180㍉の「AMR-180」、もう1台は操作の簡易さを突き詰めたけん引型の「AMRキャリ太郎」だ。ソフト開発が本業のGEクリエイティブが開発。競合ひしめく赤い海での好発進を、開発担当の越後巧氏は「本当の意味でシンプルで、導入しやすいから」だと分析する。

AMRキャリ太郎【左】はセンコー商事のAGVをベースにAMR化。操作の簡単さに優位性がある。低床小型で小回りが利くAMR-180【右】は多くのカゴ車の下に潜り込み牽引が可能

同社は個性ある中小企業の集合体・エムジーホールディングスの傘下企業。グループにマテハンメーカーの東邦大信がある。GEクリエイティブはAMRの制御・運行ソフトの開発、東邦大信はAGVの製作実績があり、協業でAMRの開発計画が始まった。AMRキャリ太郎は他社製AGVAMR化。AMR-180は両社の知見でイチから設計。ほぼ同時の2台リリースに成功した。

AMRキャリ太郎を越後氏は「導入の敷居を極限まで下げ切ったAMR」と言い切る。操作は物理的なボタン。可搬重量は500㌔で防水対応も可。機器連携は前提としていない。その分、誰でも使える簡易なインターフェースが特徴だ。

シンプルさ重視は現場経験ゆえだ。象徴的な例として過去、Bluetoothリモコンを有線式に改造したいという依頼があった。理由は「無線で物が動く原理がわからず不安だと社員が言うから」。「それが実際にあった現場の声です」と越後氏は言う。「生産技術が不在で社内の人材に機械の操作レベルを合わせたいという要望は多い。つまり求められているのは安くて操作が簡単な、誰でも使える家電みたいな製品です」

AMR-180は東邦大信の知見が生きた。生産・製造現場で55年の経験がある。そこで分かったのがカゴ車運搬のニーズ。既存のAMRはサイズや回転半径の大きさから採用できない。AMR―180なら低床小型で小回りが利く。現在使用している搬送機材で運用できるのだ。今は両AMRのブラッシュアップ中。来春完成予定だ。

■潜在需要を狙う  

シンプルなAMRは潜在需要も掘り起こしている。例えばAMRキャリ太郎に興味を持つ企業の一社は食品製造。餡子を台車で別棟に運ぶのを自動化したいという要望だった。製品の盛込み工程は路面が濡れているが、同製品なら防水対応でき導入の敷居も低い。本来、これらの需要に機械メーカーはリーチしづらく、届いても費用や操作の難度で成約が難しい。

「でも(需要は)あるんです。いかにも自動化に興味がある企業『以外』に需要は眠っていて、刺さる製品なら売れる確信があります。ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会は、自律搬送ロボのさらなる普及のためにはオープンソースを使ってソフト開発を行い、その上でSIerがどんどん中小企業の自動化を進めるべきと指針を出しました。我々はその先を狙いたい。すなわちSIerを使わずお客さんがすべて設定できる。それで初めて中小企業の自動化は進むと思います」

越後氏はさらに展望する。「物流の仕事を探すと『カゴ車を運ぶ簡単なお仕事です』と大量の求人が出てくる。つまりごくシンプルな仕事を代替する段階で困っていると想像がつきます。我々は求人ツールの会社と組み『人ではなくロボットを採用しませんか』と提案したい。人の代わりの提供を目指します」
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AMRの開発を担当するアイキューブテクノロジ事業部事業部長(事業企画課課長)の越後巧氏

2024810日号掲載)