1. トップページ
  2. 連載
  3. 扉の先85/ロボット人材育成に本腰、愛知県やSIer協会

連載

扉の先85/ロボット人材育成に本腰、愛知県やSIer協会

愛知で第3回高校生SIリーグ

中小企業へロボットを普及させるのに、自動化を担うロボットシステムインタグレーター(ロボットSIer)の慢性的な人材不足が課題となっている。(一社)ロボットシステムインテグレータ協会(ロボットSIer協会)の久保田和雄会長(三明機工社長)は中小企業が「よしロボットでも1台入れてみようか」という発想をもってもらわなければならないと指摘する。

「いくらロボットの性能が良くなってもSIerがいないと装置としてまとまらない。そのSIerが少ないとなればどうしたってロボットは広まらない」

こうした課題に対し愛知県による2021年度からの取組みが成果を上げてきた。愛知県は県立工業高校14校を「工科高校」に改称し、「ロボット工学科」をもつ高校を7校に拡大。さらに同年度からロボットSIer協会などと連携して「高校生ロボットシステムインテグレーション競技会(SIリーグ)」を立ち上げた。

SIリーグは全国の高校生を対象とし、企業のサポートを受けながら実践的なロボットインテグレーションを学べる競技会だ。1チーム最大10人の各高校が競技課題に対し約8カ月間かけて構築したロボットを使った自動化の技術を競う。装置の構築にあたっては1チームに対しロボットSIer1社がサポーター企業となり、ロボットの設置や搬送について指導・助言を受けられる。各チームは競技会当日、実演・展示説明・プレゼンテーションを行い、審査を経て評価される。

「高校生が実際にロボットシステムの構築を体験しながらその技術を身に着け、ロボット関連企業への就職の道も開く」

愛知県経済産業局ロボット産業グループの丸山裕佑氏は県内で75日に開かれた「SIer's Day in中部(愛知)」(ロボットSIerとロボット導入検討企業の交流を目的にセミナーなどで構成)でそう紹介した。これまでに2回開催したSIリーグを通じて競技会参加高校から80人以上がSIer企業などのロボット関連企業に就職した。

サポーター企業の1社、スターテクノ(愛知県岩倉市)の瀬川裕史常務取締役はSIリーグを半ばインターンシップのようにして利用しているという。

「高校生にSIerの仕事を理解してもらったうえで当社にも入社してもらっている。ミスマッチがなく離職も今のところゼロ。入社23年で10年選手を抜いてしまうほど技能を高める社員もいる」

■過去最多17校が参加

今年度の第3SIリーグは121415日、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開かれる。参加校は過去最多となる17校。北は宮城県から南は熊本県まで約半数が県外からの参加で全国大会といえる。第1回、第2回とも優勝校は愛知県外で、まさに忖度のないハイレベルの戦いが窺い知れる。会場ではロボット関連ワークショップやイベントも併催され、親子連れや小中学生ら4千人以上が来場する一大イベントとなっている。協賛する企業・団体の特典として会場内PRブースの設置や企業ロゴ掲示ができることがある(県は930日まで募集中)。来年、県内で開かれる「World Robot Summit 2025」のプレイベントも開催される予定だ。



2024725日号掲載)