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扉の先84/強みは目と手、標準機開発で成長へ 

投稿日時
2024/06/26 13:15
更新日時
2024/06/26 13:32

グローリー、通貨処理のプロがロボットSIerへ挑戦

金融機関や流通店舗等で使う通貨処理機。この分野の世界最大手・グローリーが2017年に立ち上げた新ビジネスはロボットSIer事業だった。キャッシュレスが進むなか「新たな柱を作らねばという危機感がありました」とロボット事業営業部の玉田吉広部長は語る。これに先立ち11年に埼玉工場へ大量の協働ロボットを導入。人とロボットが融和する先進的なラインを立ち上げていたことが土壌となった。当時はまだ協働ロボットが市民権を得る前で、その知見はSIerとしての独自性につながった。

小型バケット式自動倉庫とその前後の物流工程を自動化した例。自動倉庫など過去の開発例をもとに汎用品開発も進める

現在も案件の約半分は協働ロボット関連。特に埼玉工場に導入したカワダロボティクス製双腕ロボの扱いは「国内トップ」と自負する。今は川崎重工など様々なメーカーの性能や価格を比べ最適な機種を使うが、扱うのは国内メーカーに限る。「保守で心配をかけないためです」。玉田部長は責任感を滲ませる。

強みはハンド設計と認識技術だ。ハンドは社内向け含め数百の製作実績があり引き出しが多い。認識には通貨処理機の開発で培った画像処理技術が活きる。通貨処理機はセンサーで大量の紙幣や硬貨を高速かつミスなく識別するが、これを叶えるのは情報を高速で捌く上位のアプリケーションソフトだ。転じてロボットでもカメラやセンサーを使った高精度の認識に長ける。自前で良い“目と手”を用意できるため、自ずと柔軟な自動化が可能になる。

立ち上げ当初は様々な分野を攻めたが近年は三品業界に軸足を置き始めた。後発ゆえ他社が手薄な分野に的を絞った結果で、今は医療・医薬品向けが売上の半分を占める。三品業界は製造ラインこそほぼ自動化が済んでいるものの「前後の物流や包装資材の供給はまだ人手」のためそこに商機がある。「特に医療・医薬はインフラで人手不足でも生産を止められない。償却期間ではなく本当に自動化を果たせるか。つまり付加価値で投資可否をはかる例が多く、注力市場と考えています」

■標準化を武器に

4月上旬、同社の姿が第5回関西物流展にあった。提案したのは協働ロボットとAMRを組み合わせたモバイルマニピュレーターと、最小高さ2㍍の小型バケット式自動倉庫。自動倉庫は大半が大型だが、同社のものは一般的な工場フロアにも無理なく導入できるサイズだ。スタッカークレーンも小型化し「コストにはこだわった」(玉田部長)とする。同社はこうした自動倉庫などの単品販売に舵を切るのだろうか。

「単品売りするつもりはなく、自動倉庫は過去に手がけたシステムの一部を切り出したもの。あくまでイチ構成要素という位置づけです」。玉田部長は明快に言う。「ただ今後は保有する技術を活かし汎用品開発を進めたい。いかに経験をプラットフォーム化し機動的に活用できるかが重要です」

この方針をとるのはSIerの価値が世の中に十分に認められるにはまだ少し時間がかかると見るからだ。「自動化は特注に応えるわけですから毎回が新規開発のようなもの。コストもかかります。オーダーメイドスーツのように付加価値が認められるのが理想ですが、今はまだまだ(笑)。ただ世の中の変化を待っても仕方ありません。需要の8割をカバーする汎用品を開発し、必要ならカスタムする。そして残り2割のお客様にもコストメリットを提供できる体制の構築を急ぎます」
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国内カンパニー ビジネスイノベーション本部 ロボット事業推進統括部 ロボット事業営業部 玉田吉広部長

(2024年6月25日号掲載)