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三正工業「3定」を徹底し、業務効率を飛躍

投稿日時
2024/11/13 09:36
更新日時
2024/11/13 09:40

社員の半数はベトナム人

最も高い技能が要求されるという非NCの研削盤はベトナム人が操る。

[油空圧・真空機器部品の製造・組立]東京都葛飾区 

整然と組まれた専用棚に工具類や加工品がきちんと配置されている。ピカピカの工場ではないが、書類や文房具、掃除用具までもがきれいに整理されていて、隅々まで目が行き届いていることがわかる。驚くのは実に多くの社員が東南アジアの人たちであることだ。

「ここ本社工場と矢吹工場(福島県西白河郡)の社員約120人のうちベトナム人が55人、フィリピン人3人、ネパール人1人が占める。みんな優秀ですよ」

油空圧・真空機器部品の製造と組立を行う三正工業(1958年設立)の岸秀世司会長はにこやかに話す。近年、様々な職場でアジア人を目にするが、社員の半数を占めるケースは珍しい。

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6年前(当時38歳)に就任した3代目の飯島元秀社長

同社は売上高比率で油圧機器が5割を占め、真空機器が3割、空気圧機器が1割の構成。真空機器は半導体分野向けに需要が伸びており、来期は売上の37%を占有すると予測する。

「仕事を分散させたことで景気の波を受けにくい。ここまでバランスのいい工場はあまりない。もちろん戦略です」と岸会長。かつては建機向け(1社)の油圧機器が売上の75%を占めた。1本足打法にもほどがあると、この10年で様々な分野で顧客を開拓し安定経営に舵を切った。

50人が働く本社工場にはNC旋盤、マシニングセンタ、研削盤、プレス機を計16台設備する。これらでポンプ弁、計量器などの部品を機械加工し、一部はサブ組立も行い、月に約900アイテムを出荷する。部品からの液体・気体の漏れは許されないためミクロン台の加工精度が要求される。付加価値の高いサブ組立は売上の1割に過ぎないが、23割に高めようとしている。

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製造した油圧機器の部品(上段)と組立てた製品

年間売上高はおよそ22億円。コロナ禍を物ともせず、近年は売上を3年毎に6億円ずつ高めてきた。アジア人の活用でコストダウンを図ったわけではない。実習生として5年を過ごした後の給与基準は日本人と同じで、日本人を指導するベトナム人管理職もいるほどだ。

■ダメになる日本人

それにしてもなぜベトナム人がこれほど多いのか。

「日本人社員が定着しなかったから。試みに2004年にベトナムの2人を雇うと優秀だった。その後毎年23人のベトナム人を雇ってきた。日本人は権利を主張し、義務を果たさない。日本人はどんどんダメになっていく」

岸会長は残念そうに話す。優れた外国人社員を得たことで同社は若返り(平均年齢34歳)、生産性も高まった。成功の秘訣は高い管理レベルにもあると飯島元秀社長は言う。

「決められたことを確実に行わせるマニュアルを徹底している。使っている生産設備はどこも似たようなものでそこから差は生まれない」

それを端的に表すのが3定(定置・定品・定量)だ。決まった場所に、決まったモノを、決まった量だけ置く考えで、トヨタのカイゼンをベースにしたもの。同様のことを採り入れた企業はあるだろうが、三正工業は取り組み始めた2013年から片時も気を緩めずに続けてきた。工場のあちこちに日本語とベトナム語で書かれたマニュアルが張り出され、誰が見てもすぐわかり、モノを探す時間がない。切削工具の交換チップにも3定が徹底され、残数が何個になったら発注するようにと1つひとつに明記されている。

課題は永続雇用だと飯島社長は言う。「3年前にできた新制度では実習生は10年で帰国しなければならない。日本版グリーンカード(米政府が発行する移民ビザで、永住権を認める)を発行すべきだ」と提言する。

(日本物流新聞1110日号掲載)