連載
ファザーマシン2/Chapter6
- 投稿日時
- 2023/08/28 09:43
- 更新日時
- 2024/10/09 17:09
旋盤工とんこつ、手研ぎを覚える
みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。今回は、とんこつ初めての就職、新社会人編をお送りします。
最初に勤めた会社は高圧ガス用のバルブなどを製造している会社で、従業員数は約30名、入社当時社長は90歳を超えており、基本的には副社長が運営している印象でした。
私とKくんは普通旋盤の旋盤工として配属され、そこにはおじいちゃん2人とポリテクセンター出身の先輩がいました。このおじいちゃん2人こそ私の師匠であり、私の技能の根幹でもあります。
お師匠の秘蔵映像はYouTubeに公開しておりますので【とんこつ 師匠】で検索してみてください!
私たちは専用の旋盤を割り当てられ、工場長からお金を稼ぐための“本物の図面”を渡されました。基本的にわからないところや、使用する工具などは師匠に聞き、比較的簡単なものから加工させていただきました。
段階を踏んで育てていただいたので、大きな躓きもなく“この会社の仕事”に慣れていくことができました。
なぜ「この会社の仕事」という言い方なのか、それは一言で旋盤と言っても会社によって加工内容が大きく異なるからです。この会社の場合は「インチねじ」でした。
高圧ガスの製品がメインなので管用ねじと呼ばれるインチねじの加工が多かったです。
通常のメートルねじと違い、ねじ山の角度が55度(メートルねじは60度)で、ピッチも異なり専用工具が必要です。また、管用テーパねじも多く、ゲージが奥まで入って不良になることもあり、技能検定とは違った難しさを徐々に痛感していきました。
この会社で私が特に感謝していることは、手研ぎの技能を習得できたことです。(私の手研ぎ動画もYouTubeにアップしているので、よかったら見てください!)リピート品の場合、専用のバイト(旋盤で使用する刃物のこと)が用意されていることもあり、当時はちょくちょく師匠から借りていました。
特に普通旋盤の場合、R加工はRバイトで加工する必要があったので、手持ちにない場合はわざわざ研いで作ってもらうことも多かったです。後にわかったことですが、どこの会社も新しいバイトはなかなか買ってもらえないんですね…。
■師匠のワザを動画で習得
そんなわけで、ドリルをダメにしたり、突っ切りバイトを折ったりで、何度も研いで貰っていたら、温厚な師匠に『大事に使いなさい!』と叱られました。大事には使っていたつもりなのですが、このときはまだ切削条件を感覚で行っていたため、沼にハマると頻繁にバイトを折っていました(特に突っ切り)。
言い訳ですが、師匠に条件を聞いても『うーん、これくらい』と、主軸やハンドルを回すだけで具体的な数値を教えてくれなかったからです(笑)。研ぐのは大変だし、研いでる時間は師匠の仕事は進まないしで、さすがに申し訳ないと思った私は、手研ぎを覚えることを決意しました。
それからは毎日、時間を見つけては手研ぎ、暇になったら手研ぎと繰り返し練習します。ざっくりとしか教えてもらえないので、研いでいる様子を動画に撮らせてもらったり、ドリルの形状を注意深く観察したり思考錯誤を繰り返すうちに研げるようになりました!
1本しかない摩耗したドリルをさっと研いで使用したり、特殊形状のバイトを研いだりと、手研ぎはYouTuberになってからも重宝している技能で、今後も私を助けてくれると思います。
これは自論ですが、昔の職人の「見て覚えろ!」は教えるのが嫌なわけではなく、単に教え方がわからないんだと思います。自身も見て覚えたから教えられない。教えるのも1つの技能なんです。わかりやすく言語化する力…YouTubeでも重要なスキルなのでこう見えてかなり意識しています!
というわけでこの連載も今回で第6回目となりますが、楽しんでいただけていますか?
そもそも読まれていないんじゃないかと不安でいっぱいです…。YouTubeなどのSNSと違って読者の反応がさっぱりわからないので、もしよろしければお便りやメッセージなど送っていただけると大変嬉しいです。次回は、新社会人編の続き、とんこつリストラ?です。お楽しみに~。
(2023年8月25日号掲載)
工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は11.8万人(2023年8月28日現在)