連載
ファザーマシン2/Chapter51
- 投稿日時
- 2025/07/10 15:25
- 更新日時
- 2025/07/10 15:28
町工場「自社プロダクト」への挑戦
みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。
今回は「メーカーへの憧れ編」をお届けします。
私が町工場で働いていた頃、一番の課題だと感じていたのは「仕事を自分でコントロールできないこと」でした。

中村製作所さんのチタン削り出し印鑑
賃加工屋の宿命かもしれませんが、品物・価格・納期、すべてが相手次第。やりたくない仕事でも付き合いで引き受けたり、別の案件と抱き合わせで依頼されたりなんてことも日常茶飯事です。
価格にしても、「リピート品だから」と何十年も前の単価で受けているケースも珍しくありません。納期に至っては、もう言うまでもないですね。
もちろん、「仕事ってそういうもんだよな」と分かってはいるんですが、これでは安定とはほど遠く、疲弊していくのも無理はないと思っていました。
そんな中、多くの町工場が目指すのが「自社商品を作ってBtoCに挑戦する」こと。
作りたいものを作って、設計も自由にできて、価格も納期も自分で決められる。まさに夢のような仕事です。
ある日、ご縁があって三重県の中村製作所さんを取材させていただく機会がありました。
中村製作所さんはもともと賃加工が主な業務でしたが、数年前に「molatura(モラトゥーラ)」という自社ブランドを立ち上げ、心血を注いでおられます。
取材当日は、なんとか重工との親和性もあり「チタン削り出し判子」を取り上げましたが、実は雑誌やテレビでも話題なのは「ベストポット」という鍋なんです。
一見、金属加工とは関係なさそうな鍋ですが、実は蓋と鍋本体を高精度に加工する技術を活かして、極限まで気密性を高めることでうま味を閉じ込めるという仕組み。見た目もカッコいいし、機能も抜群。まさに“町工場発の逸品”と呼ぶにふさわしい製品です。
■モノづくりの原動力とは
私自身も会社員時代に、自社商品を企画・設計してテレビに出たり、東急ハンズで販売されたこともありました。でも、見積りが甘くてほとんど利益は出ず、「これ、普通に賃加工してた方が儲かったんじゃ…?」なんて思ったのも正直なところ。
まあ、当時は本当に仕事がなかったからそういうことをやってたんですけどね(笑)。やっぱり、自社ブランドを作るのって楽しいし、「やりたい!」って気持ちは痛いほどわかります。でも、それだけじゃダメなんですよね。
ただ“良い物”を作ったからといって、それだけで売れるわけじゃない。市場調査、販売計画、在庫管理、広報戦略……。ちゃんと考えて、真剣に取り組まないと、“やった感”だけが残って、結果的に苦い思い出になってしまいます。
私自身、「メーカーになりたい」という夢は、ユーチューバーになった今も変わっていません。Tシャツや腹筋ローラーなど、自分で作ったものが誰かの手に届いて、役に立てる。
それは会社員時代にはなかなか味わえなかったことで、ユーチューバーになってからこそ強く実感するようになりました。
その実感こそが、今もものづくりを続ける原動力になっていると思います。同じことばかりだと人は飽きてしまうもの。だからこそ、たとえ失敗しても、それすら楽しみながら挑戦を続けていくことが大事だと思っています。
(日本物流新聞2025年7月10日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は13.3万人(2025年7月10日現在)