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ファザーマシン2/Chapter29

「その道のプロ」の技術に驚嘆

皆さん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。

今回は、「車ハンドル製作依頼編その3」をお送りします。

仕上げ加工を終え実車に取り付けられたステアリング

加工に入る前に工程を綿密に考えておいたので、加工自体は比較的スムーズに進みました。治具も必要最低限で、スポークの2工程目のネジで引き込むブロックと、ハブの位相合わせ用の治具を作っただけだったと思います。

協力工場に依頼したセレーションも、完璧な嵌め合わせで戻ってきました。各パーツが完成し、いよいよ溶接!の前に、まずはバフ屋さんへ。

なぜ溶接が終わってからバフをしないのかというと、各パーツが溶接されて1つになると磨きにくいからです。特に今回はコストを下げるために切削加工で曲面を粗く仕上げたので、除去量が多かったことも理由の1つです。

数週間後、バフでピカピカになった部品が届きました。まさに鏡面、アルミを磨くとここまで綺麗になるのかと、職人さんの技術に驚いたことを今でも覚えています。そしてそれらをTIG溶接で1つに合体させます。こちらも協力工場にお願いしました。

現場に行き、目の前で職人さんの溶接を撮影させていただきました。まずは溶接前の段取りですが、不安定な形状をしているので、積み木のように鉄のブロックを組み合わせて歪みが出ないようしっかりと固定します。点付けが終わったら、全体の歪みをチェックし、本付けではしっかり溶棒を溶け込ませ強度を出します。

撮影しながら、かつ失敗できないプレッシャーの中、職人さんには素晴らしい溶接をしていただきました。最近になってアルミ溶接をやるようになったので今ではその大変さがより一層わかります。鉄やステンレスとは異なり時間差で一気に熱が伝わるので、アルミ溶接は本当に難しいです。

■ユーチューバーも楽じゃない

そしてもう一度バフ屋さんでピカピカに磨き上げてもらい、組み立て。金具やホーン、既成品の革パーツをハンドルに取り付けます。仕上げに旋盤とマシニングセンタで中央のエンブレムを製作して無事に完成! 車両にも問題なく取り付けられ、この壮大なプロジェクトは幕を下ろしました。

後日、カーイベントに出場されたオーナーのOさんは、このハンドルを取り付けた車両で栄誉あるアワードを受賞。さらに雑誌にも掲載されたそうで大変喜んでいました。

いろいろあって完成までに半年ほどかかり大変でしたが、自分の企画だったらここまでこだわってモノづくりをすることはないので、お受けして本当に良かったと思います。また、この動画を通じて、身の周りにある当たり前の製品も、たくさんの会社や人が協力し合ってできていることを伝えられた気がしました。

ちなみに公開した動画はあまり伸びませんでした(笑)。ユーチューバー=楽して儲けていると思われがちですが、このように企画から撮影、編集を経てアップロードするまでにかなり時間がかかるケースも少なくありません。また時間や手数をかけたからといって再生回数が伸びず、収益に繋がらないということもしばしばあります。

今回はここまで。次回もお楽しみに!



2024810日号掲載)

工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ

工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は12.5万人(2024年7月25日現在)