連載
ファザーマシン2/Chapter12
- 投稿日時
- 2023/11/24 10:31
- 更新日時
- 2024/10/09 17:04
現場によって大きく違う「旋盤加工」
みなさん、こんにちは。工業系YouTubeチャンネル、なんとか重工のとんこつです。今回は、再就職編のエピソード"やらかし"をお送りします!
仕事も決まりさっそく家探しへ! 最初にひとり暮らしをしていた家は、3点ユニットバスでした。お風呂、洗面台、トイレが全部一緒になっているタイプ...さすがに今回は嫌だったのでトイレだけ別の2点ユニットバスの物件に決めました。会社までバイクで10分のワンルーム、良物件でしたが、まさかたった半年で去るとは、このときのとんこつはまだ知りません(笑)。
旋盤工としての初めての中途採用。1社目とは違うプレッシャーを感じつつ日々の仕事をこなします。以前にも書きましたが、機械加工の仕事は『会社によって』大きく違います。普通旋盤だけでも、ざっくり分けて長手方向に長いシャフト、径方向に大きいフランジ、各種パイプ、ネジなどがあります。これに鉄系、アルミ系、銅系、樹脂系、ニッケル系などの材質や大きさ、精度も加わると専門性は多岐にわたります。
特に専門性の高い仕事は同じ会社に集まることが多いので、例えば面接に来た旋盤歴10年の人が、実は「アルミのフランジ物しかやったことない」みたいなことが起こりうるのです。
では、そんな人が鉄のシャフト物の会社に再就職したらどうなるでしょうか? 最初はめちゃくちゃ苦労すると思います。なので何気ない当たり前の仕事だとしても、すぐ別の人に置き換えられないことが多々あります。
そんな私は高圧ガスの会社で培ったねじ切りの技術をほとんど活かすことなく、はめあい公差G6といった精度重視の旋盤加工を行っていました。
仕事にも慣れてきた頃、とある半割れカムの4工程目の仕事が私のところに来ました。1工程目は、NC旋盤で黒皮除去。2工程目は、マシニングで半割りした後の固定用のねじ、ザクリ加工。3工程目は、ワイヤーカットによる割り加工。そして4工程目で、楕円になったところを普通旋盤で真円に加工します。
4つ爪を使い、割りが中心に来るよう芯出ししてから断続切削から連続切削になるまで。
その外径をマイクロメーターで測定し記入。NC旋盤部隊へワークを引き渡しました。次の仕事に取り掛かろうと思った矢先、「これやったん誰やねん!」と、怒号が工場内へ響き渡りました。
■機械加工の奥深さを知る
私が手を挙げると、加工したワークの前に呼び出されました。「お前、これ寸法どうなってんねん!」と再度怒鳴られました。
どうやら楕円を真円にするだけなく、決められた寸法にしないといけなかったようです。まだ荒加工だからと、適当な寸法に加工し叱られてしまいました。特にNC旋盤の場合、スクロールチャックではないので、基本的に径に合わせた専用の生爪を用意します。適当な寸法だと、別途その径に合わせた生爪を用意する必要が出てくるので、担当者が怒るのも当然です。
しかもこの品物は全部で8工程もあり、1つの遅れが多くの人に影響します。少し認められて調子に乗っていた私ですが、地面に叩きつけられたような気分でした。すぐに謝罪し、超特急で他の生爪の径に合うよう再加工し、事なきを得ました。
今回のことで図面によっては多くの人が関わることや、自分の仕事が周りに与える影響を学びました。社内だけでここまで多くの工程のある品物は、前の会社にも無かったですし、改めて「機械加工」という仕事の奥深さを垣間見た気がします。
次回、「犯人は誰? 何故かテーパが死んでいるドリルと旋盤の謎」に迫ります。お楽しみに~。
(2023年11月25日号掲載)
工業系YouTuber【なんとか重工】とんこつ
工業系YouTubeチャンネル【なんとか重工】を、相方のケロと2人で運営。旋盤やフライス、マシニングに溶接機、3Dプリンターなどを活用して自分たちが作りたいモノを作るチャンネル。登録者数は12万人(2023年10月26日現在)