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扉の先112/AGIBOT、中国人型ロボットのトップランナーが実装加速へ

投稿日時
2026/08/07 16:07
更新日時
2026/08/07 16:13

フィジカルAIの夜明け

人型ロボット(ヒューマノイドロボット)とフィジカルAIの領域で、設立わずか数年で世界のトップランナーへ急成長を遂げた、中国・上海に本社を置く

年間100万台もの大規模量産体制の準備を整えたAGIBOTのヒューマノイドロボット

「AGIBOT(智元創新)」。同社の東アジア責任者兼日本法人代表の張赫氏は「フィジカルAIの業界は2023年末から本格的に注目され技術革新が続いているが、数万台規模の量産や完全自動稼働に至ったメーカーはまだない。当社も先端技術開発と社会実装を進めている段階だ」と語る。

一方で、現場導入は着々と進む。既存の物流倉庫ではAMRやG2P(Goods-to-Person)等の自動搬送が普及しているが、同社は中国の電子機器製造会社の24時間稼働生産ラインで導入を開始。「初期10台から年内300台、将来的には千台以上の導入を見込む。コンビニの棚卸しや病院・介護施設でのコミュニケーション用途など多岐にわたる検証も推進中だ」と張氏は明かす。「日本のホテル業界向けに開発中の『タオルの折り畳みロボット』は、年内には現場でタオルを畳むモデルを完成させ、数台の先行導入を行う予定。来年は数百台規模に拡大し、2〜3年後には数千〜数万台の規模で本格導入できると見込む」と浸透に向け勢いを増す。

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日本のホテル業界向けに開発中のタオルを折り畳むロボット。あらゆる動作に対応できるエンドエフェクタや動作基盤モデルも開発中

数あるロボットベンチャーの中で、同社が大きな存在感を顕わした理由は独自の垂直統合型開発体制にある。「ハードウェア、運動制御を担う『小脳』、推論・意思決定を担う『大脳』、実地データの収集からモデル実行までを自社で一貫開発できるのは、世界でもテスラと当社の2社のみ」と強調する。多くの新興企業が特定領域に偏重する中、同社はハードとソフトを融合させた「エンボディドAI(物理的な『身体性』を持つAI)」として一体開発を行い、環境変化にリアルタイムに適応できる汎用性を実現している。

実用化の肝となるハンド開発にも注力する。簡単な追加学習で様々な物体の掴み方を即座に理解させられる「手先専用の動作基盤モデル」を年末から来年にかけてリリース予定だ。

■データ収集の優位性と、日本との共創

AIモデル進化の鍵を握るのはデータの量と質だ。そのためシミュレーションではなく、実機ロボットが作業中に収集する「実機データ」と、人間の頭部にカメラを取り付けて一人称視点で収集する「エゴセントリックデータ」の蓄積を重視する。その保有量は「世界随一」で、NVIDIAが開発・検証に使うデータの約8割に同社がオープンソース化したデータセットが活用されているほどだ。

また山善やINSOL-HIGHなど民間4社とのコンソーシアム「J-HRTI」で、AGIBOT製ロボットを用いて7月から千葉県でデータ収集センターを稼働中。日本でのデータ収集の意義を張氏は「日本特有の精密部品加工の現場ノウハウや職人技のデジタル資産化にある」と話す。技能をモデル化できれば、自社利用に加えAI開発企業へのデータ販売も可能となり、ユーザー企業がソフト提供者へ変化する新たなビジネスモデルも生まれる。

量産体制においても、中国のEVメーカーを支える主要サプライヤー(Tier1、Tier2)と合弁会社を設立。既存の自動車生産ラインや品質管理ノウハウを転用し「年間100万台以上」を安定供給できる体制を確立している。とはいえ、「一国のサプライチェーンだけで世界に通用するロボット作りは不可能。日本法人を置いたのは日本市場のシェア獲得ではなく、パートナーとしての共創が一番の目的」と張氏。「高解像度カメラや精密サーボモーター、高耐久減速機など日本が誇るキーパーツの採用や国内組み立て、東南アジア経由の柔軟なサプライチェーン構築も視野に入れる」とし、共に世界市場を切り拓く未来を描く。

張赫(AGIBOT株式会社 代表取締役社長).jpg

AGIBOT日本法人  張 赫 社長






執筆:モノクエ編集部
本記事は、創刊70年超のモノづくり専門紙「日本物流新聞」の編集部が制作しています。製造業に精通した専門記者が、現場取材に基づいた正確で鮮度の高い情報をお届けします。




(日本物流新聞2026年8月10日号掲載)