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ジダイノベーター Vol.6/非GPS空間でのドローン自動飛行を目指す

サイトセンシング、自己位置測定技術の応用で

(国研)産業技術総合研究所(産総研)の技術移転ベンチャー・サイトセンシングは非GPS環境下(屋内や地下などGPS信号が届かない場所)でも位置情報を把握できる測位技術を基に位置情報事業を手がけている。

装置を使用して自動飛行を行なう様子

近年力を入れているのがドローンの自動飛行。小さな箱型の装置(仮称:GeoPack)をドローンに装着(フライトコントローラーに接続)することで自動飛行を可能にする。東京都の「5G技術活用型開発等促進事業」に採択されるなど注目を集めている。

同社の平林隆代表取締役社長は「今日ドローンは大きな注目を集めていますが、活用が進む中で課題も多く見つかっています。特に悪天候、非GPS環境、自動飛行の3つです。当社の技術を用いることで、非GPS環境下での自動飛行の実現につながるのではと考えています」と話す。

ドローンの自動飛行に一役買いそうなのが産総研で研究が進められ、同社の基盤技術となっている自律航法(DR:Dead Reckoning)だ。外部信号を使わずに、ジャイロセンサーや加速度センサーから得たデータを演算処理することで、高精度での測位を実現するのが特長。一般的に使用されている測位技術は外部信号を主に利用している。例えばGPSWiFi、ビーコンだが、使用環境が限定されるなど課題も多い。特に、GPSはカーナビやスマートフォンのマップ機能などでも活躍していることや、近年様々な技術を組み合わせることで精度が飛躍的に向上していることから万能と思われがちだが、屋内や地下では使用できない。また、天候や超高層ビル群、衛星の位置、通信環境などの外部要因によっても精度が左右される。

同社はそうした環境下でも使用できる外部信号を用いない測位技術で、倉庫や地下での人間やフォークリフトの現在位置や移動状況を自動計測するシステム「PDRplus」を提案してきた。しかし、「トラッキングされる側の心的ハードルなどもあり、事業としては満足いくものではなかった」と振り返る。

■ドローンの課題解消に向けて

この測位技術でドローンの自動飛行を思いついたのが2020年の年末。移動するモノを計測するための技術をモノの移動のために使用するという逆転の発想が今回の開発につながった。平林社長は「自動運転・飛行には自己位置の把握が最も重要となります」とし、同社の技術が課題解決に有効であることを強調する。DRの技術を応用し、自己位置を正確に把握しながら次の位置を演算することで、自動飛行を行うもの。SLAMの代替として膨大な演算からの開放を目指している。

21年度の国内のドローンビジネス市場規模は前年度比約25%増(インプレス総合研究所が3月公表)と大きな盛り上がりを見せている。活用が広がる一方でまだまだ課題も多くある。

「操縦者に頼らないドローン運用のために、自動化提案が様々行われています。しかし、その多くがGPSを前提にしているため、導入したはいいものの、上手く活用できていないという声を多く耳にします」

現在は簡単な航行実証を行なった段階であるが、今後より複雑な移動を自転車並みの速度で行なえるようにする予定とのこと。平林社長は「電波やGPSが届きにくく、濁りが発生したときには使用困難になる水中ドローンの自動化にも、当社の技術なら対応できます」と先を見据える。

2022910日号掲載)