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ジダイノベーター Vol.3/要件定義めぐる争いに終止符を

ファースト・オートメーション、自動化設備の仕様・工程管理をクラウドで完結 

ロボットを始めとする自動化システムが急速な発展を遂げている。しかしそうした設備の導入時に、その出来・不出来を左右するのは今も昔も要件定義の正確性だ。仕様の認識に齟齬があれば、最新鋭の設備でも効果を発揮することは難しい。

仕様管理やそれに付随する工程管理をクラウド上で完結できるロギア

そして自動化全盛の昨今、そうした仕様の「抜け・漏れ」をなくすサービスが登場し、注目を集めている。

サービスを提供するのは名古屋市西区のファースト・オートメーション。要件定義の観点から工場の自動化を支援するスタートアップだ。ロボットSIerでの営業経験を持つ伊藤雅也CEO2020年に創業。21年にサブスクリプション方式のクラウド型自動化支援サービス「ROGEAR(ロギア)」の提供を始めた。

「ロギアは仕様や工程の管理に必要な機能をオールインワンで備えています」と伊藤CEOは話す。例えば自動化設備の導入に必要な仕様書や工程表、ヒアリングシートなどのドキュメントがテンプレートで用意されているほか、カスタマイズも可能。ドキュメントの変更履歴はロギア上で管理され、情報は設備の買い手も含めた関係者全員が閲覧可能だ。またチャット機能を備え、個別メールを使うことによるエビデンスの散逸も防げる。「良いものづくりは適切な仕様検討や情報管理から始まります」という伊藤CEOの言葉には、力がこもっていた。

そもそもロギアを開発したのは、ロボットシステムの営業を行うなかで、伊藤CEO自身が要件定義に起因する手戻りを課題に感じていたからだ。「自動化設備の製作プロジェクトでは、仕様をめぐる『言った・言わない』の不毛な水掛け論が往々にして発生します。そうすると手戻りで余分な工数がかかるのに加え、各社の信頼関係にも亀裂が走りプロジェクトの転覆にもつながりかねない。自動化需要が伸長するなか、コアとなる仕様管理が従来のままで良いのかという思いがありました」

■無駄な粗利益をロギアで解消 

ロボットなど一品一様の自動化システムの販売価格には、一般的にある程度の安全率が上乗せされることが多い。これは手戻りによる後々の利益減少・赤字発生リスクを見込んだものだが、伊藤CEOはこうした「無駄な粗利益」にもロギアでメスを入れたい考えだ。

「売り手が見積額を高めに設定せざるを得ない要因の多くは、エンドユーザー側から必要な情報が吸い出せず仕様に曖昧さが残っているからです。つまり必要な情報を過不足なくヒアリングできれば、自動化システムの販売価格も下げられるはず。そうした互いにとって良いビジネス環境を作るのがロギアの目的です」

要件定義に必要な情報を吸い出せるかどうかは、多くの場合は営業担当者の力量や経験に左右される。しかしロギアの機能を使えば、経験豊富な営業マンのナレッジをもとに作成したヒアリングシートをテンプレートに用いることで、確実な要件定義ができるようになるというわけだ。プロジェクト全体を見える化することで、致命的な仕様漏れや納期遅れなど「最悪の状況」も防げる。「リリース間もないが評判は上々」といい、22年中の導入企業100社獲得に向け歩みを進める。

(2022年5月15日号掲載)