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ジダイノベーター Vol.27/リニアモーター式の立体ロボット倉庫
- 投稿日時
- 2024/12/24 16:06
- 更新日時
- 2024/12/24 16:11
Cuebus、26年の上場を目指して
今年9月、セレクトショップ大手・ビームスの物流拠点「ビームス ウエアステーション」(東京都江東区)に世界初のリニアモーター式ロボットを使った自動倉庫が導入された。これにより、従来型の自動倉庫では保管が難しかったコートやシャツが、Zラックに吊るしたまま自動で保管・搬送できるようになった。
この都市型立体ロボット倉庫「CUEBUS(キュバス)」を手掛けたのが、2015年設立のスタートアップCuebus(東京都江東区)だ。
「CUEBUSの一番の強みは処理能力がロボット台数に比例しないこと。リニアモーター内蔵のフロアタイルを床に敷き詰め、その上を荷物が乗ったトレイが前後左右にパズルを解くように走る仕組みなので、ロボットの稼働率がいっぱいになって処理能力が落ちるということがない。また、リフトを搭載すれば上下動もでき、高い処理能力と空間密度を両立できる都市部向けのマテハンシステムです」(Cuebus・代表取締役社長兼CEOの大久保勝広氏)
大久保氏はソフトウェアエンジニアとして、アパレル業界向けの販売在庫管理システムやスマートフォン用POSシステムを開発・提供する企業を起業し上場まで達成している。しかし、世界で戦うには「ソフトウェア単体では難しい」と実感し、日本のモノづくりと組み合わせたソリューションを模索した。
「そんなことを考えていた際、友人から『アメリカの倉庫は物の方からやってくるよ』と言われたことがCUEBUSに至るきっかけです。友人はGTP(Goods to Person)のことを言いたかったと思うのですが、当時私は全くそのイメージが湧かず、『物の方から来るってどういうことだよ』って頭を悩ませました。真空状態にして運ぶとかいろいろ考えていく中で思いついたのが、今のCUEBUSの原型となるイメージでした」
■リニアモーターが差別化に
CUEBUS最大の特徴は、リニアモーターで駆動すること。タイルにモーターが内蔵されているため、可動側のトレイには滑車がついているだけで、システム全体を動かすのも100㌾電源で可能だ。
「一般的なリニアの形は、可動対象を両サイドからコイルで挟んで動かすもの。我々のは上に乗っかっているだけ。最初は動かないと言われたが、我々の熱に根負けしたある企業がやってみたらできた。なので、当社はリニアモーターを使っているだけでなく、自社でモーターを開発していることも差別化要素」
現行モデルは75㍑のオリコンサイズに最適化され、積載重量100㌔まで対応しているが、来年6月には第4世代としてハンガーラックなどの搬送に対応した大きなサイズをリリース予定。さらに、第5世代として1×1パレット、1㌧まで対応したモデルも鋭意開発中だという。
既に世界展開も視野に入れてはいるが、それよりも先に「上場」を目指している。
「上場を一度経験した身からすると、ハードウェアベンチャーに対する投資家からの視線は非常に冷たいです。それは、これまでに上場して成功した企業があまりにも少ないから。今後出てくる新たな企業のためにも、26年には上場したいと考えています」
Cuebus・代表取締役社長兼CEOの大久保勝広氏
(日本物流新聞2024年12月25日号掲載)