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ジダイノベーター Vol.24/世界初 閉鎖型植物栽培装置を量産化

投稿日時
2024/07/10 13:05
更新日時
2024/07/10 13:13

プランテックス、日本のモノづくりを植物工場に

「金型の革命児」と言われた金型メーカー・インクスの血を引くスタートアップがある。世界の食糧問題の解決に向け閉鎖型の植物栽培装置「Culture Machine」を手掛けるプランテックス(東京都中央区、山田耕資社長)だ。

植物工場には大きく分けて太陽光型と人工光型がある。人工光型の方が環境制御に優れるが、その中でもプランテックスの装置は密閉された栽培棚ごとに環境パラメータを管理することで、より緻密かつ個別に環境制御を行える。閉鎖型の植物栽培装置の量産にこぎつけているのは同社が世界初で、未だ類を見ない状況だ。

船橋拠点の量産向け栽培装置。川崎の先端植物研究所には研究用の栽培装置が34台並ぶ。拡大に向けて社内設備の充実を図っている

「一般的な設備を使用して栽培室全体の空調を制御しても、場所によって±5℃くらいの室温差がある。植物にとっては季節が違うくらい環境が異なる」(山田社長、以下同)

Culture Machineは植物工場の強みである環境制御を一から見直し、植物の生育に影響を与えるパラメータを20種類に定義。それぞれがどのように作用し合うかも分析し、環境変動要因を極力抑えた装置とシステムからなる。

「植物の成長に影響を与えるのは大きく分けて光・空気・水。その中に光量や明暗期時間、温度、湿度、イオン濃度、流量速度などのパラメータがあり、Culture Machineは植物の種類や生育状況に合わせてパラメータを独立制御できる」

そうした装置やシステムの作り込みに生かされたのが、日本のモノづくりの技術だ。

「当社のエンジニアの多くが製造業で経験を積んできた。日本の工作機械や半導体製造装置など生産装置がグローバルで戦えるのは作り込み、つまりメティキュラス(緻密)なロジックの積み上げを一つの装置に合わせ込む力があるから。日本のモノづくりの技術や考え方を参考に、植物工場の産業機械化を進めている」

■穀物や生薬も

既に社会実装も進む。2022年、イオン系スーパーを運営するU.S.M.Holdings(東京都千代田区)と共に、リーフレタスを15千株生産する大規模工場を茨城県土浦市に建設。毎日、約200店舗にレタスを安定供給する。「食べ物の難しさは、いかに社会課題の解決に繋がる技術でも、そもそも美味しくないと受け入れられないこと。土浦で作ったレタスは肉厚な葉がシャキシャキしていて、毎日売り切れるほどの人気」だという。

236月には両社でコンソーシアムを設立し、市場の拡大に向けた取り組みを進めており、社会実装フェーズから全国に複数工場を展開する拡大フェーズに移行しつつある。

事業の拡大だけでなく、「基本的にはなんでも栽培できる」特性を生かし、これまで植物工場では栽培が難しいとされてきた果菜や穀物、薬用植物などの栽培研究も進めている。

特に生薬などの薬用植物の約8割は中国からの輸入に頼っており、栽培方法の確立が急務となっている。同装置であれば研究と量産に大きな差がなくシームレスにつなぐことができるため、「すぐに量産しなくても栽培技術を確立していること」に大きな意味を持たせることができる。山田社長は「社会実装と量産の安定化は土浦で実現した。これからは社会課題の解消に繋がる取り組みをさらに拡大していきたい」と想いを語る。

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山田耕資社長

2024710日号掲載)