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産業潮流

26年に来るかもしれないヒューマノイド量産の大波

投稿日時
2026/03/31 09:00
更新日時
2026/03/31 13:41

EVの再来、量産の衝撃に備えよ

中国製ヒューマノイド(人型ロボット)の進化が加速している。2月の「春節ガラ」で披露された演武は、同国の技術が飛躍的な進歩を遂げ、実用段階に近づいたことを印象づけた。中国での本格的な量産は2026年内にも始まる見込みで、需要の成熟を待たずして市場にヒューマノイドが溢れることになるだろう。大波を前に、国内企業も特性を理解し、活用を模索する必要がある。

昨年の国際ロボット展にはヒューマノイドが数多く出展された(画像はIDECファクトリーソリューションズの参考出展機)

216日、旧正月を祝う中国中央電視台の春節聯歓晩会(春節ガラ)が放映された。日本の紅白歌合戦に相当する国民的番組だが、近年は中国が国威をかけて注力する先端技術のショーケースと化している。今年は巧みなカンフーを披露する子供たちに合わせ、Unitree(ユニツリー)社の最新ヒューマノイドが登場。正拳突き、受け、蹴り、バク転、しまいには酔拳と、一糸乱れぬ演武で視聴者を驚かせた。

「遠隔操作ではないか」と懐疑的な見方もあるが、少なくとも関節の動きが数年前よりかなり滑らかになっていることは間違いない。安全面の課題は残るものの、中国の技術はここ数年で爆発的な進歩を遂げた。熾烈な競争で落伍者の山を築きつつ、屍を踏み越えて技術を研ぎ澄ませてきたEVの再来を思わせる。ヒューマノイドは我々が身構えるより早く日本へ大量に流入するかもしれない。

中国のロボットメーカー・RealmanRoboticsはヒューマノイドを「未来の象徴」ではなくすぐに「現場で使える労働力」と位置づける。「二足歩行や外観のリアリティより上半身の作業性能、特にマニピュレーション技術を重視し、産業用途への適用を優先してきた。人と同じ形状の腕、手首、腰の動きなど可動域の広さを生かし、既存環境を大きく変えずに導入できる」(日本法人・易峰社長)

■本格量産26年後半

ヒューマノイドは果たして普及するのか。調査各社は203335年頃までに市場規模が5兆円を超えると予測。インドのフォーチュンビジネスインサイツのように、34年に26兆円規模に達するという大胆な試算もある。

ニデックドライブテクノロジーの辻田穣治社長は「2~3年後からヒューマノイド市場は毎年20~30%成長する」と先読みする。背景にあるのは中国政府の強い後押しだ。中国のロボット減速機向け歯車加工需要を受けるホブ盤メーカー・カシフジの香月邦彦取締役は「中国では『電動車の次はロボットだ』とこの分野(ロボット)は活況。26年後半の人型ロボット量産を中国政府は目標に掲げている」と語る。

これが実現すればヒューマノイドは需要の成熟を待たずして市場に溢れることになる。既にコモディティ化も進行し、熾烈な競争で価格もかなり手頃だ。一般的な製造業では人型が必要なシーンは多くないとされるが、建築、造船、災害対応、介護など特性が活きる業界は多い。安全規格という壁もあり当面は限定的かつ緩やかな普及に留まるだろうが、19年頃から日本進出が相次ぎ今では街中に浸透した中国製AMR(自律搬送ロボット)の例に照らせば、どこかで普及のギアが一段、上がるのではないか。

事態を受けて国内各社も「ヒューマノイドとの付き合い方」を模索する。ダイフクは311日に「東京Lab」を開設。「ヒューマノイドを含む次世代ロボット技術と先端技術を組み合わせ、高度で自律的なマテハンシステムの構築を目指す」とする。山善はヒューマノイドの「共有データ基盤」を築き、各社が学習データを蓄積・共有する取り組みを進めている。早稲田大学、テムザック、村田製作所らが参画する(一社)「KyoHA(京都ヒューマノイドアソシエーション)」は、国産ヒューマノイドの初期プロトタイプを4月ごろに公開予定だ。

KyoHAの橋本健二理事はこう説く。「ヒューマノイドが社会実装される段階では安全規格の議論も必ず出てくる。その際に発言権を持つためにも、日本として自力でヒューマノイドを開発しておく必要がある」(17面にインタビュー)

日本は現状、ヒューマノイド開発も活用も先行しているとは言い難い。ただまもなくヒューマノイドが大量に市場に供される事態を想定した対応は進めておくべきだろう。(一社)日本物流システム機器協会の村田大介会長(村田機械社長)は昨年8月、「紺屋の白袴ではないが、まずは我々も自身の足元を見ながら勉強や効率化に努めなければならない。例えばヒューマノイドが注目されているが、買って使わないと何ができて何ができないのかもわからない。そういう好奇心は重要」と語った。好むと好まざるとにかかわらず、ヒューマノイドの大波に備える必要がある。

(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)