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産業潮流

トクリュウ犯罪で防犯フィルム出荷22年比160%に

投稿日時
2026/03/31 12:58
更新日時
2026/03/31 13:01

高まる自衛ニーズ、フィルム施工・卸のECOP

匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)による凶悪な強盗事件が社会問題化する中、住まいの防犯対策が改めて注目されている。建築用フィルム施工・卸のECOP(京都市)では、防犯フィルムの出荷額が2023年から急増。25年は22年比で約160%増加した。背景には警察庁も指摘する「窓」の脆弱性と、侵入手口の凶暴化、そして犯罪者心理における「わずか5分」の猶予を稼ぐことの重要性がある。SNSを隠れ蓑にした犯罪の更なる増加が懸念される中、個人による自衛の重要性も高まるばかりだ。

3M「Scotchtint 防犯フィルム SH15CLAR-A」を5mm厚フロートガラスに貼り付け、男性がバッドで何度も殴りつける。ガラスにヒビは入るが完全には割れず、この際の「焦り」が侵入者にそれ以上の犯行を思いとどまらせる(3M YouTubeより)

警察庁「住まいる防犯110番」の統計によると、一般戸建への侵入窃盗で最も多い侵入経路は「窓」だった。共同住宅も窓からの侵入が表出入口に次いで多く、手口としては窓ガラスを破壊する「ガラス破り」が大きな割合を占めている。 

従来の空き巣は住民の不在を確認して静かに侵入するものが大半だった。しかし近年のトクリュウ事件は、金品の所在を確かめるために住民が就寝中の深夜に工具を用いて窓ガラスを叩き割る強硬な手口が目立つ。実際に首都圏で発生したトクリュウ犯罪では、施錠された窓ガラスが粉砕され、住人が暴行を受ける凄惨な事例が発生している。

こうした暴力的な侵入には「時間の確保」が有効とされる。警察庁の調べでは侵入に5分かかると侵入者の7割が諦め、10分以上では9割超が断念するという。防犯フィルムは激しい打撃を加えてもガラスが飛散せず、膜が貫通を阻むため、犯行を断念させる時間を稼ぎやすい。官民合同会議による試験で5分以上の防犯性能が確認された製品には「CPマーク」が付与される。

ECOPの武田慶彦営業部部長は「トクリュウ犯罪が活発化した2324年はCPマーク付きフィルムの問い合わせが極めて多く、34カ月の施工待ちが発生した」と振り返る。

■「子から親へ」広がる防犯ギフト

同社の防犯フィルム出荷額は22年に6330万円だった。だが広域強盗事件が頻発した23年に8895万円、24年に9000万円と推移し、25年には1100万円に達した。

「特に2324年は地方の親を心配する子世代からの依頼が多かった」と武田氏は語る。「高齢世帯はとっさの行動が難しく、古い住宅はガラスが薄いことも多い。トクリュウ犯罪が盛んに報じられたことで、関東のベッドタウンを中心に子が親に代わって施工を申し込むケースが定着した」。防犯フィルムの需要は現在も高止まりしている。足元では宝飾店やトレーディングカード店がショーケースに貼る事例も増加しているという。

防犯フィルムの施工費用は一般住宅の主要な窓(10~15平米)を網羅しても30~40万円程度。シャッター設置に比べ安価で施工は一般住宅なら1日で済み、耐用年数も15年程と長い。さらに紫外線カットや遮熱といった副次的なメリットも近年の猛暑で支持されている。 

武田氏は「日本の窓フィルム普及率はまだ1割程度。防犯目的に限ればさらに低い」と警鐘を鳴らす。「まだ個人宅の自衛意識は緒についたばかりで、より広める必要がある。長期的には窓ガラスの防犯フィルムを『普通』にしたい。それが我々の使命だ」

SNSは匿名性が高く、自らの検挙を避けたい指示役からすると都合の良いプラットフォームだ。残念ながら今後もトクリュウ犯罪は形を変えながら発生し続けるだろう。犯罪の形が時代に合わせて変化する中、立ち向かう我々の側の意識もアップデートする必要がある。

防犯01.jpg

ECOP武田慶彦営業部部長

(日本物流新聞2026325日号掲載)