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産業潮流

ジャパンモビリティショー2025、パワートレイン「多様化」鮮明に

投稿日時
2025/11/17 12:58
更新日時
2025/11/17 13:04

中韓勢、日本市場攻略に意欲

自動車産業の未来像を提示する「ジャパンモビリティショー2025」が東京ビッグサイトで開幕した。「人とモビリティの未来をつなぐ」をテーマに、従来の自動車メーカーの枠を超えた517の企業・団体が参加。技術革新に加え、多様なライフスタイルに対応する新たな価値提案が行われた。

トヨタ センチュリー2ドアクーペコンセプト

トヨタはフラッグシップカーの「センチュリー」のコンセプトカーを世界初公開。初日には豊田章男会長が登壇し、レクサスを超える最上位ブランドとして独立させる構想を表明。公開されたセンチュリーの2ドアクーペ・コンセプトは、「日本らしいおもてなしの究極形」とした。

同社はセンチュリー、レクサス、トヨタ、ダイハツの4ブランド体制を再構築し、各ブランドの個性を際立たせる戦略を強調。またEVのみならず、ハイブリッド、水素など多様なパワートレインを提供し、持続可能な社会への貢献を目指す姿勢を鮮明にした。

このほか、ホンダは自社の電動技術や水素技術を核とした次世代モビリティを提案。日産はEVの先駆けとして培った技術を、三菱は独自のプラグインハイブリッド技術を前面に押し出した展示を行った。

異業種からの参入も目立つ。電機メーカーのシャープは、日本市場への投入を目指すEVコンセプトカー「LDK+」を披露。「車内がもうひとつの部屋になる」というコンセプトで、プラズマクラスターやプロジェクターといった同社独自の家電技術を車載化し、モビリティ空間の可能性を広げた。

IT大手のSCSKは自社のソフトウェア開発技術をベースとしたコンセプトカーを出展。同社は「販売目的ではなく、自動車産業の未来を共に創り上げる『共創の場』を提供することが狙い」と語る。

実際にコンセプトカーが出来上がるまでの期間はわずか9カ月。「国内サプライヤーでは対応が難しく、調達先は中国など海外を頼らざるを得なかった」と話す。

日本市場に向けて積極的なアプローチを続けているBYD。ブース全体は「Technological Harmony(技術と自然の調和)」をテーマに設計され、同社の独自技術「ブレードバッテリー」や自社開発の車載OSを紹介。バッテリーから制御ソフト、モーターまでを一貫して自社で手掛ける「垂直統合型ビジネスモデル」が競争力の源泉であることを強調した。

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BYD「RACCO」

会期中に同社日本法人の東福寺厚樹社長は「47都道府県すべてに販売店舗を置き、現在の66拠点から100拠点へと増やす」と発表。出展内容も日本市場を強く意識したラインナップとなった。

特に目を引いたのは参考出展の「RACCO」。そのスタイリングは昨今、国内市場で売れ筋のスーパーハイトワゴンとほぼ同様。後席スライドドアを備え、全長3395㍉×全幅1475㍉×全高1800㍉と、軽自動車の規格内に収まるボディサイズだ。

同社は「ホンダさんのN-BOX、スズキさんのスペーシア、ダイハツさんのタントといったあたりを強く意識して開発した日本市場向けモデル。ガソリン車と変わらないコストパフォーマンスでEVを入手できる点を訴求したい」と語る。

EVのみならず、プラグインハイブリッドモデルも日本市場へ投入する。「SEALION-6」がそれだ。同社独自のプラグインハイブリッドシステム「DM-i(デュアル・モード・インテリジェンス)」を搭載したSUVだ。高効率なエンジンと強力なモーターの組み合わせにより、高い低燃費性能と静かでスムーズな電動走行を両立。

同社は「普段使いは電気で、長距離走行はエンジン走行も可能なため、充電インフラを気にせずお使い頂ける」といい、価格も「日本市場で戦える価格」と自信を見せる。

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BYD「SEALION-6」

一方、2023年1月から2025年9月末までのBYDの累計登録台数は6598台にとどまっているのが現状だ。「日本市場はレベルが高く、ライバルとなる車種も多い。性能面、機能面はもちろん、アフターサービスも充実させなければならない」と話す。

■日本市場に挑戦する意味

2022年に再上陸を果たした現代(ヒョンデ)自動車。現在はオンライン販売が主となるが、昨年には横浜にサービス拠点を設けたほか、各地のカー用品販売店に試乗車を置きユーザーに訴求するといった動きを見せている。

同社ブースでひときわ注目を集めたのは、燃料電池SUV「NEXO(ネッソ)」の最新モデルだ。2023年モデルをベースに改良を重ね、航続距離は従来比約10%増の820㌔に達する。5分足らずの水素充填で満タンとなり、CO2を一切排出しない環境性能が特徴だ。

ブース内では、水素タンクや燃料電池スタック(発電ユニット)の断面モデルも展示され、仕組みをわかりやすく解説。水素を電気に変換してモーターを動かす構造を体感できる演出に、多くの来場者が足を止めた。

日本市場ではトヨタ「MIRAI」、ホンダの「CR-V e:FCEV」がすでに販売されているが、同社日本法人ヒュンダイモビリティジャパン商品企画チームの山崎正喜氏は「日本は水素ステーション網が整いつつあるアジア有数の市場。経済産業省も2030年までに1000カ所体制を目指しており、当社としても選択肢のひとつとして提案したいと考えている。当社が日本に再進出したのは、世界で一番厳しい市場だから。日本市場で得られた知見を今後の開発にフィードバックするのが大きな目的」と話す。

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ヒョンデ「NEXO」

■アウトドア市場に狙い

起亜自動車の出展テーマは「意味のある移動」。商用EVシリーズ「PV」と、アウトドアや災害時にも活用できるキャンプ仕様「EV9」「を出展し、移動の自由と暮らしへの拡張を両立させた新しいモビリティ像を提示した。

PV5は都市配送やライドシェア用途を想定した中型モデルで、ボックス型の車体により広い積載スペースを確保。後部モジュールを交換することで、貨物バンから乗用シャトル、移動店舗などに瞬時に変形できる。

一方「PV7」はより大型で、航続距離は600㌔。冷凍車や物流拠点車としての利用を想定しており、商用EV市場での実用性を前面に押し出した。ブースでは「PV5」を移動オフィス仕様に改装し、内部にはデスクや通信機能を備えたデモ車を展示。ノートPCやドローンを稼働させる実演が行われた。

同社のフラッグシップSUV「EV9」をベースにした「EV9アウトドアコンセプト」はキャンプや防災をテーマに設計。太陽光発電パネルを搭載したルーフテントと、車載バッテリーによる給電機能を備える。車体後部にはIHコンロや冷蔵庫、照明用ソケットなどを収納し、走行バッテリーから直接電力を供給。停電時には家庭用電源としても活用できる。

同社は「アウトドアとEVの親和性は高く、今後は日本のキャンピングカーディーラーを中心とした販売網を構築していく」と限定的ながら市場攻略に意欲を見せている。

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KIA「EV9アウトドアコンセプト」



(日本物流新聞2025年11月10日号掲載)