東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆 氏
中国政府が公表した2023年の実質GDP伸び率は5.2%だった。それを支えるはずの個人消費、投資と国際貿易はいずれも軟調に推移したため、実際の成長率は公式統計を遥かに下回っていると思われる。米国シンクタンクのラジウムグループの推計によると、同年の中国経済の成長率は高くても1.5%程度とみられている。
中国政府が公表した2023年の実質GDP伸び率は5.2%だった。それを支えるはずの個人消費、投資と国際貿易はいずれも軟調に推移したため、実際の成長率は公式統計を遥かに下回っていると思われる。米国シンクタンクのラジウムグループの推計によると、同年の中国経済の成長率は高くても1.5%程度とみられている。
2022年2月、ロシアによるウクライナ侵略以来、国際情勢はますます不安定化している。イスラエルとハマスの戦闘によって中東情勢も混沌としている。そのなかで、台湾海峡有事が懸念されている。
習近平政権は正式には2013年3月に始動した。その翌年の2014年に中国初の「反スパイ法」が制定され施行された。それから約10年経って、「反スパイ法」が改正され、今年の7月1日に施行された。
ロシアだけでなく、ブラジル、アルゼンチン、サウジアラビアなどの国々も中国との貿易でドルを使った決済を人民元に切り替えると発表した。そして、マレーシア政府も人民元決済の導入を検討していると明らかにしている。これはドル覇権に対する人民元の挑戦であると一部において受け止められているようだ。
世界の上空を巨大な白い気球が飛んでいる。しかも、それは一つだけでなく、複数の気球があちらこちらで飛んでいる。これらの気球がどこから来たのか。アメリカ政府が関連の情報を公表する前、誰も気球の存在すら知らなかったようだった。アメリカ政府の発表を受けて、中国政府は突如としてそれは民間の気象研究用気球と発表した。しかし、その発表は遅すぎた。米軍は米国領海の上空でその白い気球をミサイルで打ち落とした。
日本は大きな悩みを抱えている。日本経済は中国経済に大きく依存しているなかで、中国とディカップリング(分断)を進めるわけにはいかないが、これ以上対中依存度が高まるリスクをどのように管理すればいいのか。簡単には結論を出せない。
コロナ禍が発生してから2年半経過した。感染はまだ終息していないが、多くの国では、予防策を講じながら、コロナ禍前の日常を取り戻している。そのなかで唯一硬直的なゼロコロナ政策を取っているのは中国である。中国では、数人ないし数十人の感染者が見つかっただけで町全体が封鎖されてしまう。そのうえ、全員に対して繰り返してPCR検査を実施する。
東京財団政策研究所 主席研究員 柯 隆 (か りゅう)氏
冷戦終結からわずか30年しか経っていないのに、米中の「新冷戦」が始まろうとしている。目下の米中対立が「新冷戦」ではないとの指摘も少なくないが、両者による覇権争いの基本的構図を考察すれば、明らかに「新冷戦」の入り口に差し掛かっている。