オピニオン
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター 所長 古田 貴之 さん
- 投稿日時
- 2025/09/29 10:51
- 更新日時
- 2025/09/29 10:53
運動神経もつ「フィジカルAI」で自由に動く
顔を持たない犬のような四脚ロボットを横から蹴とばすと、ロボットは一回転するも態勢を整えた。
「こんなふうに受け身をとる。従来のロボット技術ではできなかった」

そう話すのは、蹴とばした千葉工業大学未来ロボット技術研究センターの古田貴之所長。四脚ロボット自体は中国Unitree製で50万円前後という。ただし、人間の小脳にあたるフィジカルAIが備わっている。これがボディを動かす。つまり運動神経が備わっているということだ。
古田所長は仮想空間で四脚ロボット4096台を訓練している様子をパソコンで示す。「こうして訓練をとおして学習した運動機能を実際のロボットにインストールして動かす。これが最近の流行。オリジナルの動きとは異なった動きをする」と明かす。
ロボットは段差のある障害物を難なく上る。だが、カメラやレーザーセンサーをもたない。完全な目隠し状態と言える。
「今までのロボットはレーザーセンサーで段差の高さや奥行きを測り、自分の脚の動きを計算して段差を乗り越えた。ところがこれには周りが見えていないし、我々は段差を乗り越える動きを一切つくっていない。だからどんな段差でもかまわないし横向きに上ることだってできる」
古田所長はこれからはフィジカルAIが非常に重要になると言う。「一般にロボットが工場などリアルな空間で動くためには周囲の環境を把握する必要がある。ところがAIにボディをもたせる『フィジカルAI』があれば運動神経が備わっているので人間のように動ける」と新しい技術の利点を話す。
(2025年8月19日、東京・墨田区で開かれた記者発表会から)
(日本物流新聞2025年9月25日号掲載)