オピニオン
名古屋市 経済局イノベーション推進部 産業立地交流課 課長補佐 小林 勇太 氏 / 課長補佐 吉田 龍志 氏
- 投稿日時
- 2025/05/28 15:33
- 更新日時
- 2025/05/28 15:51
ビジネス環境豊かな名古屋に中枢機能を
海外展開サポートや外国企業誘致も注力
日本の三大経済圏のひとつである名古屋圏は、産業が集中する中心都市。製造業の集積を背景に商業やサービス業も発展しており、バランスの取れた産業構造と経済規模の大きさは全国有数でもある。その環境を活用しつつ、イノベーションを生むスタートアップ振興の機運も高まるなかで、名古屋市は企業誘致にも力を入れ、さらなる活性化を目指す。

【写真左】名古屋市 経済局イノベーション推進部 産業立地交流課 小林勇太 課長補佐
【写真右】名古屋市 経済局イノベーション推進部 産業立地交流課 吉田龍志 課長補佐
――名古屋市に進出した企業事例を特設サイトに多く上げられています。
小林 「ひらけNAGOYAポテンシャル名古屋ビジネス進出サポートサイト」は、名古屋の魅力や進出企業のインタビューを配信しています。補助金の案内も載せていますので、進出を検討する企業にぜひ見てもらいたいです。最近では自動運転モビリティを開発するスタートアップ、ティアフォーさんのインタビュー動画も載せています。
――産業の層が厚い名古屋で、企業誘致に力を入れる背景は。
小林 自動車や航空機などモノづくり産業が多く集積する名古屋圏はこれまでも発展を続けていますが、100年に一度という自動車産業の変革で、産業基盤も必ずしも盤石ではないという認識が生まれました。そうした中、平成30年頃からDXやイノベーション促進の観点から、ICT企業の拠点の集積に取り組んでいます。また、新たなビジネスや人を呼び込むことに期待し、意思決定権のある本社機能の誘致を推進する取組みも行っています。直近では昨年度に補助制度を見直しました。補助を手厚くし、分野を絞らず要件を緩和。さらに、東京で大規模な企業進出セミナーを開くなど幅広い企業に周知すべく誘致活動を強化しているところです。
――補助金制度以外のサポートは。
小林 進出後も名古屋に根付いて事業を続けていただけるよう、名古屋の展示会出展サポートや、人材採用に関する展示会出展支援や学生との交流会なども行っています。本市で実施している、Hatch Technology NAGOYAなどの社会実装事業や公民連携事業などは東京や別の地域からの企業も参加が可能ですので名古屋市での実証を軸に、さまざまな企業などと縁を深めていただければと考えます。
――名古屋に主要拠点を置く強みは。
小林 アクセスの良さがまず大きなメリットですね。東京と大阪の中間に位置し、リニアが開通すれば名古屋から大阪の移動時間は約50分から約30分に、東京までは約90分から約40分とより短くなります。名古屋を起点として2時間以内の交流人口の数は約7000万人。このビジネス圏の規模は大きな魅力。名古屋駅周辺を中心に再開発が進んでおり、名古屋駅周辺のオフィス面積はここ10年で約30%増えました。名古屋鉄道による名古屋駅地区再開発も予定されています。また、首都圏と比べて通勤時間も短く家賃も安い。物価も安定しています。住みやすさは社員と家族にとっては重要なところ。森記念財団都市戦略研究所によると「生活・居住」については全国1位と評価されています。待機児童は11年連続0人で、世界最大級のプラネタリウムを有する科学館や展示種数日本一の東山動物園など文教施設も充実。研究環境や大学数も国内有数、また県内大学の就職状況も男女共に約半数が愛知県内を希望と人材も豊富です。
――外資企業の進出も多いそうですね。
吉田 スペイン企業のトレシッド・ジャパンさんは補助金活用により、拠点を設立していただき、販路開拓の支援も行いました。中国の協働ロボットメーカーJAKA Robotics JapanさんはJETROのサポートにより名古屋に拠点を構え、当市主催のネットワーク懇談会で登壇していただきました。外資企業は製造業が多く、新しく拠点を構える際にモノづくりが強い名古屋が選ばれます。製造業の他は情報通信の企業も多いです。
――最近の変化は。
小林 コロナ禍で上がっていたオフィスの空室率が、昨年はかなり改善して空室率が1.5%ほど低下しました。利便性や職場環境の良さを求める声が多くなり、オフィス環境の整備が人材獲得における競争力になります。従業員の働きやすい高機能のオフィスなどが一つの潮流になるでしょう。
吉田 当市の取り組みで言うと、海外展開のサポートも力を入れております。まずASEANに向け、今年度はタイとベトナム、インドネシアを対象にオンライン商談会や現地での商談をサポートします。大きな市場を見込み、インドに進出したいという企業も増えました。企業誘致では、人口減少する中で外資企業からの需要を大切にしたい。これまで愛知県と共にコンソーシアムを組んでいましたが、今年は名古屋市単独でさらなる外資企業誘致の強化に取り組みます。
(日本物流新聞2025年5月25日号掲載)