オピニオン
日本歯車工業会 専務理事 宇都木 崇 氏
- 投稿日時
- 2025/03/12 13:07
- 更新日時
- 2025/03/12 13:09
「崖っぷちの歯車業界」で存在感発揮

昨秋のJIMTOFで展示した会員企業の一覧パネルを紹介する宇都木崇専務理事。18歳で米国に渡り、大学を卒業し大学院を修了した。通勤時の片道計40分のウォーキングと人と話すことがストレス解消法という。
「ギヤカレッジ」受講者、3月17日から募集開始
−−歯車業界の景況感は。
「当工業会は約120社の会員で構成されます。このうち正会員の歯車加工会社が約90社、賛助会員の加工機・測定機メーカーが約30社。9割は中小企業で、コロナ禍を経て自動車関係の仕事をもつ会員は少なくなりました。正会員の半数ほどのデータを取りまとめた年間出荷額は近年、2800億~3500億円(非歯車製品を含む)で推移してきました。2023年は前年比2割増、24年は微減から横ばいといったところです」
「近年は業界の再編、後継者問題による廃業などで会員数は少し減りました。でもその一方で、若い社長を迎え新しい分野に挑戦しようとする意欲的な会社が入会されています。たとえば航空機や自動車分野の試作をする会社は、ホブを使わずに独自開発のソフトとストレートの1枚刃でインボリュート曲線に仕上げたりします」
−−「ギヤカレッジ」受講者の募集を始められます。
「3月17~31日に当工会のウェブサイトで募集します。ギヤカレッジは歯車の基礎や設計、製造、性能評価などの座学と、現場実習、工場見学、実演などで構成されます。今年は6月から来年2月までの期間、月に2回ほどのペースで行います。9月までが講義、10月からは実技です。会員以外の方も受講できます。定員30名のマスターコース(基礎講座)と20名のプロフェッショナルコース(応用講座)から成ります。マスターコースは例年満席で、プロフェッショナルコースは定員の半数ほどの参加でしたが、昨年はPRを強化したこともあり19名に参加していただきました」
−−人気がありますね。
「ギヤについて体系的に教える大学が少なくなっているからです。京都大学の著名な教授が『絶滅危惧科目』なんて表現されています。デジタルやAIに注目されがちですが、歯車は自動車や産業用ロボットなどに欠かせません。非常に重要ですが、崖っぷちの業界とも言えます(笑)。自動車メーカーさんやサプライヤーさんはお困りのようです。技能者が少なくなり自社で教えることが難しくなっているからです。元々は2005年に九州大学大学院が産官学連携事業として設置した『ものづくりスーパー中核人材センター』のなかの『歯車製造コース』としてスタートしました(08年からは九州大学の自立事業として『ものづくり工学教育研究センター』に改称)。11年に当工業会がそれを継承し今日に至っています。私も去年参加させていただきましたが、昔とは違うギヤのつくり方、特に5軸マシニングセンタ(MC)で歯車をつくる動きがあって、それを大手工作機械メーカーさんで学ぶ特別講座も含まれます。またどんなソフトを使うと有効か、どんな機上測定ができるか、3次元測定機で測定した結果を5軸MCにフィードバックするような講座も新しく加えています」
−−貴工業会の課題や今後注力することは。
「歯車業界の存在感を高めることが必要と思います。歯車はギリシャ時代から存在し、ずっと私たちはつくり、使い続けていますが、それでもやはり皆さんに歯車の存在に気づいてもらう必要があります。昨秋のJIMTOFでは当会に注目してもらおうとのぼり旗を立てたりしました」
−−旗には何を記されたのですか。
「『何で今、歯車なん?』『古い奴だとお思いでしょうが……』『たかが歯車、されど歯車!?』などと記しました。あまりお金はかけられませんでしたが、気になってブースに足を運んでくれる来場者もいました」
「当工業会としては3つの事業に取り組みます。ギヤカレッジを含む教育、JGMA(日本歯車工業会規格)やJISとISOをすり合わせる規格、海外視察などの国際交流︱︱
の3つの事業です。海外視察としては昨年は韓国に、一昨年は台湾に行きました。今年はドイツの有力な歯車加工機メーカー数社の視察を検討しています」
(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)