オピニオン
大阪商工会議所 会頭 鳥井 信吾 氏
- 投稿日時
- 2025/03/10 10:34
- 更新日時
- 2025/03/10 10:38
大阪 GDP「1割経済」へ
大阪商工会議所は、商工会議所法基づいて設立された地域総合経済団体で会員数は3万1845件を数える(2025年2月21日現在)。大商は大阪・関西万博において、中小企業・スタートアップを支援する大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」の全体企画を大阪産業局とともに行っている。万博への同会議所の取り組みを鳥井信吾会頭(サントリーホールディングス代表取締役副会長)に取材した。

――大阪商工会議所として万博を応援し、万博を活用して如何に関西経済を活性化していくか。
「あくまで万博の主役は参加の世界158カ国です。万博の意義は世界158カ国・地域、7国際機関が半年間、同じ場所に集まり、SDGSの達成に向けて更に先端技術や未来の世界についての知恵を出しあうことにあります。また万博の経済効果は2兆円といわれています。しかし、万博の効果はもっと未来志向的なものです。私は万博会場から世界に向けて、ネクストSDGS、すなわち新しいより発展したSDGSを世界に向けて提案してほしいと思います。万博は世界中の多様な価値観が交流し、そうした中から、セレンディピティが生まれ、新しい価値が創出される貴重な機会となるでしょう」
■より発展したSDGsを
――中小企業の万博出展支援「リボーンチャレンジ」での取り組みや、出展の見どころは。
「『リボーンチャレンジ』は優れた大阪の中小企業・町工場・スタートアップを発掘・支援し、新しい夢のある技術の成果や活躍を大阪ヘルスケアパビリオンにおいて展示・発信する取り組みです。毎週展示企業を入れ替え、26週間で441社が出展します。大阪商工会議所は全体企画を大阪産業局と共同で担うほか、5週間分の展示企業の取りまとめ役も担っています。見どころの一例としては、『空中に浮く靴』や『月面探索バイク』、『物資を運ぶ飛行船』、『ウェルネスオフィス』など、技術の夢に挑み、社会課題に挑む企画があります。万博を契機に、技術者がアイデアを持ち寄り、仲間と情熱を傾け、夢を追いかける『チャレンジ』と『イノベーション』に思い切って踏み出せる機会となることを期待しています」
――大阪まちごと万博共創プラットフォームについて教えてください。
「『まちごと万博』は、大阪の街全体を万博会場に見立て、万博をきっかけに生まれる面白い『イベント』や『プロジェクト』、『人』を『まちのパビリオン』と称して、情報発信する活動です。大阪商工会議所が、大阪府・大阪市万博推進局、関西経済連合会、関西経済同友会とともに「大阪まちごと万博共創プラットフォーム」を構成し、万博を盛りあげたい若手の団体である一般社団法人demoexpoと協働して、公民連携で運営しています。パリ・オリンピックは街中で開催され、世界の注目を集めました。大阪・関西万博においても、『まちごと万博』を通じて、大阪の都市魅力を世界に発信したいと考えています」
――「BM万博商談」について概要や狙いを教えてください。
「『BM万博商談』は万博への参画に関心がある売り手と、仕入れ・外注先を探している買い手による万博関連発注案件を掲載し、買い手と売り手が商談できる機能を備え、万博関連の様々な商品、資材、役務提供などの取引を支援しています。本サイトを通じて、大阪の中小企業が海外パビリオンの内装工事を受注した例もあります。中小企業の大阪・関西万博への参画を促し、経済効果をより広く波及させることを狙いとしています」
――70年の前回の万博の時には大阪は国内GDPに占める割合が約10%で、東京と「二眼レフ」と言われる存在感がありました。現在は約7%と2位ではあるもののトヨタなど製造業が盛んな愛知県とは僅差であり、東京に大きく引き離されています。今万博を契機に「1割経済」へ成長させられるか。
「大阪には世界シェア60%や90%の高い技術力を保有する企業が多くあります。しかも機械、化学、精密機器、部品、医薬、サービス産業、ITなど、バランスよく企業が集まっています。万博で技術やアイデアを発信し『共創』につなげることで、イノベーションが生まれ、大阪経済の発展につながるきっかけにしたいと考えています。また、大阪の強みである観光・食の大阪・文化産業の振興も不可欠です。今やインバウンド需要をさらに拡大し、大阪の魅力を世界に発信することが、大阪経済の持続的成長につながります。さらに、ベンチャー企業やスタートアップの育成を推進することも重要です。うめきたⅠ期・Ⅱ期、大阪公立大学の発足と森ノ宮キャンパスの開設(25年9月予定)と、大阪には次々とイノベーションやスタートアップの拠点ができています。こうして中長期的な成長を描くことが可能となります」
「大阪・関西万博を単なるイベントに終わらせるのではなく、そのレガシーを地域経済の発展につなげ、大阪の意欲を引き出せば『1割経済』への成長も十分に可能だと考えています」
くうぞ、万博
大阪商工会議所は、大阪・関西万博に向けて、大阪観光局、大阪外食産業協会とともに 、 大阪の多様な食の魅力(幅広さや深さ)を、 SNS等を活用して国内外に発信する取り組み「くうぞ、万博。」プロジェクトを開始。飲食店等が万博にちなんだ新メニューで来街者をもてなす「万博メニューでおもてなし」や、知る人ぞ知るグルメ・観光スポットを紹介する「大阪まちごとバル」等、食のチカラでまちなかの盛り上げを目指す。詳しくはhttps://www.osaka.cci.or.jp/area/food/
(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)