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オピニオン

経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課 物流企画室 室長補佐 大西 智代 氏

投稿日時
2023/11/27 09:00
更新日時
2023/11/27 09:00

物流の2024年問題
中堅中小のマテハン機器・システム導入に55億補助

「補助事業活用し、物流投資の効果を感じてもらいたい」

----「物流の2024年問題」が迫る中、11月10日に閣議決定された令和5年度補正予算案では「物流効率化に向けた先進的な実証事業」が採択されました。

「来年4月からトラックドライバーの労働時間に制限がかかるという中で、何も対策を講じなければ24年度には約14%30年度には約34%の輸送力が不足するという試算もある。政府としてもしっかりと取り組まなければならない問題だと認識している。荷姿の標準化や商習慣の見直しなど中長期的な取り組みと共に、即効性があり効果の大きい荷待ち・荷役作業等時間の削減に向けた物流投資を促進する必要がある。今年度の補正予算案として、中堅中小企業にマテハン機器やロボットなど自動化・省力化に資する設備導入を促す『物流効率化に向けた先進的な実証事業』という支援策を通した」

——具体的な内容は。

「予算額は55億円で、事業内容は「荷主企業における物流効率化に向けた先進的な実証事業」と「自動配送ロボット導入促進実証事業」がある。荷待ち・荷役作業等時間の削減に寄与する荷主向けの支援事業では、荷主企業の物流機器・システム導入費用の1/2(中堅)または2/3(中小)を補助する予定。投資事例は、荷待ち・荷役時間の短縮に直接関わるパレタイザー・デパレタイザーやバース予約システム、レンタルパレット利用料だけでなく、AMRや自動仕分け機、無人フォークリフト、伝票電子化・物流EDIBIツール等も想定している。また、中小企業は初めて自動化・省力化に挑む企業も多いため、専門家を雇う費用等のイニシャルコストも事業の中で見ていきたい」

——個社ごとに申し込むのでしょうか。

「個社ごとに申し込むことも可能だが、物流は連携することが重要だと考えているため、複数社で連携するコンソーシアム形式も認める予定だ。自社だけが効率化しても取引先が設備投資を行っていないと物が滞ってしまう。関連事業者間で物流資材や情報システムを統一する等、連携して取り組むことで、単独での投資より高い次元での省力化・効率化・作業者負担軽減に寄与できると考えている。また、個社だけでは投資下限要件(額は調整中)を越えられない時に、複数社で共同申請することで、投資下限要件を満たす使い方も想定される」

——大企業との連携は。

「大企業やその子会社等は補助対象ではないが、取引先等の中堅中小企業とコンソーシアムを組んでいただく場合、投資下限要件については大企業による投資額も合算して判断する予定だ」

■荷待ち・荷役時間 2時間以内に

——最新設備・システムの導入以外に取り組むべきことはありますか。

6月に『我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議』でまとめられた『物流革新に向けた政策パッケージ』では、即効性のある設備投資の促進に加えて、『来年の通常国会での法制化も含めた規制的措置の検討』が大きなポイントとなっている。『大手荷主・大規模物流事業者が荷待ち・荷役作業等時間の短縮に向けた計画作成の義務付け』『大手荷主に対する物流管理の責任者の選任の義務付け』『下請状況を明らかにする実運送体制管理簿の作成義務化』などを盛り込む予定」

——来年の法律施行となると企業側も対策を急ぐ必要がありそうです。

「同パッケージの取りまとめと同時に、『物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取り組みに関するガイドライン』を公表しつつ、2023年内を目途に業界・分野別の「自主行動計画」の作成について、業界団体等を中心にお願いしている。ガイドラインでは、政府が発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者の3者に対し取り組んでほしい方向性を具体的に記載している。本ガイドラインや、自らの業界の「自主行動計画」を見ながら、順次取組を開始いただくのが法律施行前の準備としてよいと思う」

——ガイドラインのポイントは。

「荷待ち・荷役作業等時間の削減に大きな問題意識を持っているため、各事業者はまず現在の荷待ち・荷役時間を把握いただき、その上で、荷待ち・荷役等作業時間を原則計2時間以内、既に2時間以内となっている事業者は1時間以内を目指していただきたい」

——来年度が正念場となりそうです。

「荷待ち・荷役作業等の時間削減のためにも、まずは、今回の補助事業をしっかりと使っていただくことが重要になる。物流への投資効果を、多くの企業に予算を使って速やかに実感いただきたい。申請に関して疑問や相談などがあれば是非物流企画室に問い合わせていただければと思う」



(2023年11月25日号掲載)