オピニオン
日本AM協会 専務理事 澤越 俊幸 氏
- 投稿日時
- 2025/03/12 13:10
- 更新日時
- 2025/03/31 15:46
AM戦士を見殺しにするな
特異性を理解した戦略を
日本AM協会の澤越俊幸専務理事は、AM普及への熱い思いから、時にAM戦士(マイノリティーながら企業内でAMの普及を目指す人を同氏はそう呼ぶ)から「澤越さんはAM過激派だよね」とも評される、舌鋒鋭い論説で知られる。そんな"AM過激派"の澤越氏に、AMの現状と課題、4月16日〜18日の3日間、東京ビッグサイトで開催される「AM EXPO東京」の見どころを聞いた。

――現在のAMに纏わる日本と世界の状況はいかがですか。
「実製品へのAM活用については、海外が大きく進んでいて日本は実例が極端に少ない事は、皆さんご存知の通りです。既存工法で高度なモノづくり技術を持ち、その点で大きなビジネスを成功に導いて来られた国内の方々、私はこの方々を『大人』に例えますが、この大人にとっては、今まで経験してこられたモノづくりの技術や経験と全く異なるAMは、大きな投資が必要になるにも関わらず損益分岐点が読めない未成熟な成長過程にある『子供』に例えられていると思います。大人の土俵で子供を評価するなら、両者は近づく事が難しい関係と考えます」
「それに対して海外、特にモノづくり技術で後塵を拝してきた国、例えば中国等は、AM等の全く新しい技術に国家戦略的に取組み、未成熟なAMに対して失敗を恐れず活用する事で、モノづくりでの覇権を狙っています。日本はこのような状況の中で、次世代へのモノづくりビジネスのキーテクノロジーの1つとして、AMに戦略的に取り組む必要がある事は皆さんもご認識されていると思っています。しかし、『総論賛成各論反対』の対応をされる方が殆どで、AMの将来に期待を寄せつつ、AMへの具体的取組みとなると、大人の視点で子供AMの未成熟ポイントを指摘し、具体的関与の否定理由を並べるのです」
「もう少し具体的に言うと、AMの大きな特徴を認識し期待しつつ情報収集の対応はしますが、既存工法と比較してAMの不得意な点を理由にして、AMに対して具体的な対応をしない事を正当化する状況が長く続いているのです。このような状況で、AMに国家戦略的に取り組む相手と競っていけるのでしょうか。AMに将来性を感じて注目するなら、情報収集から具体的アクションに行動を変える時期だと考えます」
――治工具などに活用は進んでいるがなかなか製品への適用は進まないですね。
「品質保証の厳しい国内では、全く新しい工法AMでの製品適応にハードルが大変高くなる事は、間違いありません。そこで、治工具やツール・金型での軽量化・複雑形状化、高機能化や、人手で行われている補修の自動化に、AMを活用する事によって、AMの特徴や問題点への対応、つまりAMノウハウとなる技術・経験の修得ができ、AM製品取組みへの大きなステップになると考えています。よって、治工具などのAM活用は、まずAM取組みのファーストステップとして、取り組むべき手法と思います。私どもがAM交流会を行っているユーザーAM戦士の方々も、治工具などでのAM活用事例を多くお持ちです」
――治具工具などに活用は進んでいるがなかなか製品への適用は進まないですね。
「品質保証の厳しい国内では、全く新しい工法AMでの製品適応にハードルが大変高くなる事は、間違いありません。そこで、治工具やツール・金型での軽量化・複雑形状化、高機能化や、人手で行われている補修の自動化に、AMを活用する事によって、AMの特徴や問題点への対応、つまりAMノウハウとなる技術・経験の修得ができ、AM製品取組みへの大きなステップになると考えています。よって、治工具などのAM活用は、まずAM取組みのファーストステップとして、取り組むべき手法と思います。私どもがAM交流会を行っているユーザーAM戦士の方々も、治工具などでのAM活用事例を多くお持ちです」
■AMメーカーが自社製品にAMを使ってない
――澤越さんがAM戦士と呼ぶ皆さんの座談会を開催しました。澤越さんはオブザーバーとして参加していただきましたが付け加えることがあれば。
「官庁も同席の中で、AM戦士とAM業界側の意見交換ができた大変意義ある座談会だったと感じました。モノづくりの時代を大きく変える期待が持てると共に、変える強い意志を持った方が国内にも多くおられるであろうと予感でき、あとはその情報や思いを結集できれば、国内のAM活用を急激に進める事ができると確信できました」
「あえて要望するなら、会社を説得しAMについて積極的な意見を出して頂いたユーザーAM戦士に対して、AM業界側がその思いにもっと応えていく姿勢を強くアピールして欲しかったと思います。AM業界企業には、主流となる既存工法でのビジネスがあり、特異なAMビジネスに対して経営資源を含めた各種制約を受ける事は理解できます。しかし、AM戦士の思いに応えるには、AMという特異性を理解した戦略的対応ができないと、AM戦士を見殺しにする事にもなりかねません」
「特にAM装置を製造している企業は、その企業内や関係グループ内で、AM製品を使用させ、AM製品の実績拡大に努めるべきです。自動車製造企業が、『自社の車は安全です、是非購入してください』と言いながら、自社の人が自社の車を全く購入していなければ、ユーザーはどう思うでしょうか。こんな簡単な戦略であっても、実施できていない状況では、ユーザーAM戦士を支援し、AMビジネスを拡大する事は難しいと思わざるを得ません。長年苦労をしてこられたAM業界の方々であるからこそ、苦言を呈してまでも、是非強い姿勢で頑張って頂きたいと心より願っています」
――2025年は、AMの普及(試作機から量産機へ)への分岐点になるとおっしゃっていますね。その兆候が見えてきていますか。
「大手企業のAM製品実績公表も出るようになり、国内販売AM装置も大型化されています。また、AM製品化に必要な、材料や設計デザイン・シュミレーション技術や後加工技術の提案も多くなっており、従来の試作AM活用から、製品活用に必要な環境が整いつつあると感じています」
「まだまだ十分ではありませんが、日本の技術者の方々が本気になって取組み始めれば、急激に技術革新ができる事は、過去の歴史より想像できます。国内の状況は展示会や各種情報共有の場で、AM普及の兆候として感じられます。AM業界のソリューション展示セミナーや、ユーザー事例展示発表に是非ご注目を頂き、技術動向だけではなく、AM取組み経緯や問題解決手法について参考にして頂きたい」
――AM EXPO 東京の見どころを教えてください。
「AM普及時期到来をアピールしたく、研究機関や企業事例展示をします。日本Additive Manufacturing学会の設立、大学でのAM取組み、大手重工メーカー・自動車メーカーのAM取組み、そして造幣局のAM取組みについて、展示や一部セミナーでの講演を行います」
「当日本AM協会からも、過去最高の19社が展示を行い個別セミナーも実施します。また、樹脂AMについては、最終日のセミナーで実製品活用事例の説明も行い、AM製品が身近な所で活用されている事を知って頂きたい」
――最後にAMに取り組みたいと考えるユーザーにコメントを
「いつもAMに取り組みたいと考えるユーザーにお話しをするのですが、AMは現状ビジネスから新しいビジネスに、ゲームチェンジを起こすための手法の一つに過ぎません。もし、その手法の1つがAMと期待するのであれば、展示会等での情報収集だけの時期は終わりました。高価なAM装置を購入しなくてもいいのですが、具体的に自社ビジネスとしてのAM活用を想像して、展示会場にご来場頂き、説明員と会話をして頂きたい。その準備がなく情報収集だけが目的なら、メーカーや展示会後のWeb情報を見るだけで十分です。しかし、説明員とビジネスイメージを持って会話を頂く事によって、AMへの理解が深まるのと、AMビジネス化へ少しでも近づく事ができるでしょう。そして、有償造形企業や地域の公設試(工業技術センター)や大学等、研究機関を活用し、AMビジネス化の道筋を見つけて下さい。AM装置の導入はそれからだと考えます」
「AM業界において、AMビジネスソリューションに対応できる人材は大変限られています。AM業界はAMビジネスへの取組み意識の高い企業に、その限られた経営資源を投入する必要があります。AMで新しいモノづくりのゴールドラッシュが来ますが、これは早い者勝ちです。AMに対して積極的、戦略的な思考で取組み意識を高く持って頂きたくお願いします。我々日本AM協会は、そのようなAM戦士の方々を支援致します」
(日本物流新聞2025年3月10日号掲載)