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ローランド・ベルガー パートナー 小野塚 征志 氏
CLO設置義務化で変わる日本の物流

投稿日時
2026/01/08 14:31
更新日時
2026/01/08 14:34

今年4月1日、物流関連二法の改正が本格施行され、一定規模以上の荷主にはCLO(物流統括管理者)の選任や中長期計画の提出、定期報告が義務付けられる。最大のポイントは「荷主」に初めて規制の網がかけられたことにある。総合物流施策大綱の検討会などにも出席するローランド・ベルガーの小野塚征志氏は、「荷主主導で歪められてきたサプライチェーンを経営課題として正すこと」と規制の狙いを捉える。CLO設置の意義や取り組むべき方向性について小野塚氏に聞いた。

「政府も荷主が物流改革のボトルネックになっていると気がついた」

そう話すのはローランド・ベルガーの小野塚征志氏。物流関連二法の改正、とりわけ物流統括管理者(CLO)の設置義務化を「現場任せの物流から、経営としての物流へ転換させる制度」と位置付ける。

改正法は荷主や物流事業者に対し「積載効率の向上」「荷待ち・荷役等時間の短縮」などを努力義務として課すと同時に、取扱貨物量が一定規模(年間9万㌧以上)を超える荷主を特定荷主として指定し、CLOの選任や中長期計画の作成を義務化する。対象は概ね3200社と推定されている。

CLOの選任要件には役員など「事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者」と明記されており、小野塚氏はCLO=物流部門の責任者ではないことを強調。「CLOは物流に詳しくなくてもよい。むしろ経営者目線で他部門に意見を言える人が適任」とする。

実際の業務としても中長期計画の作成や定期報告の作成、改正法で示されている指標(運転者一人当たりの一回の輸送ごとの貨物の重量の増加、荷待ち時間・荷役等時間の短縮)への対応だけでなく、拠点の再編や配送ルートの最適化、在庫戦略などサプライチェーン全体の最適化を主導する必要を指摘する。

部分最適ではなくサプライチェーン全体の改革が必要である例として「積載効率を高めるため従来毎日行っていた配送を週1回に削減するケース」を挙げる。配送を集約することで輸送費が5分の1になる一方で、「在庫や生産の調整が必要になり追加コストが発生し、思ったほど利益改善につながらない場合がある」とし、「(規制対応ではなく)全社戦略として何を目指すかを考えるのが一丁目一番地」と全体最適の重要性を説く。

■CLO設置を競争力強化のきっかけに

制度の浸透には時間がかかりそうだ。小野塚氏は「すでに動き出しているトップランナーは500社程度、第二集団に改正を契機に取り組もうとしている500~1000社程度があると見ている」とし、残る多くの企業は認識すら十分でない可能性を指摘する。

だがここに省エネ法の先例が示す教訓がある。省エネ法では責任者の明確化と定期報告の義務化を通じ、かつて「省エネ後進国」と評された日本が時間をかけて「省エネ先進国」へと転換した。小野塚氏は「省エネ法が3年、5年かけて意識を変えたように、物流も同じ道をたどる可能性は十分にある」と述べる。定期報告と評価のサイクルがしっかりと定着すれば日本企業がサプライチェーン全体最適化の先進国へ躍り出る好機を得る可能性もある。

結局のところ、改正は罰則や社名公表といった外的圧力だけでなく、経営として物流を捉え直す契機である。小野塚氏の言葉を借りれば「国に言われたからやるのではなく、自身の会社がより儲かるためにやる」ことが肝要である。物流を経営の中心に据え、全社最適を実現できる企業こそが、2030年以降の人手不足時代を生き抜く競争力を手にすることになる。

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(日本物流新聞2026年1月10日号掲載)