環境対応、企業の「実行」は成熟も「発信」の手ごたえ低調
- 投稿日時
- 2025/11/14 09:00
- 更新日時
- 2025/11/14 09:00
可視化で課題鮮明、信頼性の担保に課題
ケイ・エヌ・ティー調べ
ケイ・エヌ・ティーは、全国のマーケティング・広報担当者1231人を対象に「マーケティング グリーンサーベイ」(6月17日~6月23日・ネット調査)を実施した。企業の環境対応における「実行」と「発信」の関係性を可視化し、環境施策の成熟度が高い企業ほど、活動の広がりと発信の整合性が連動する傾向が明らかになった。一方で、発信の手応えは全体的に低調であり、「信頼性の担保」を意識した取り組みは一部にとどまった。同社は「環境対応の実践を可視化し、どのように社会的信用やブランド価値の向上へと結びつけていくかが、今後の焦点となります」としている。
気候変動への適応と経済成長の両立が求められているなかで、環境対応をどのように「行動」に移し「社会に伝える」かは、企業のマーケティング・広報部門にとって新たな使命となりつつある。同調査は、環境対応の意識・実行・発信の3側面を多角的に捉え、特に「実行と発信の連動性」を明らかにすることを目的として実施された。
環境意識は9割を超え、6割が何らかの対応を実施している。「担当業務」のほか、「事業全体」「意識の高まり」「日常生活」「成果実感」はいずれも前年より改善した一方、業種や企業規模において対応の差が見られた。また、環境対応の進み具合により、「先進企業」「推進企業」「途上企業」の3タイプに明確な課題の違いが見られた。
対応内容は「ペーパーレス化」(60%)、「省電力」(41%)など比較的身近な施策が中心であり、マーケティング部門ならではの取り組み(環境配慮型イベント、ノベルティ選択 など)は1割程度にとどまった。成果を実感しているという回答は全体では19%だが、先進企業に限ると45%となる。
環境配慮を発信している企業は全体の65%だが、「十分に伝わっている」と答えたのはわずかに9%である。先進企業では39%が「発信に手応え」を感じており、実行と発信の連動が明確に示された。
■目標やKPI設定2%と低調
発信時に重視される要素は「伝え方・わかりやすさ」(32%)が最も多く、「実績や継続性」(13%)、「エビデンス・信頼性・正確性」(3%)といった裏付け要素は相対的に低い結果となった。グリーンウォッシュ対策を講じる企業は全体で9%、マーケティング活動における目標やKPI設定もわずか2%にとどまる。
環境対応の進捗度に応じて分類した「先進企業」「推進企業」「途上企業」の3タイプのうち、先進企業では、事業全体での取り組みと社内連携が進み、環境配慮を取引先選定の必須条件とする割合が53%(全体平均15%)に達した。一方、途上企業では「取り組みたいが体制が整っていない」「発信方法が分からない」といった声も多く、環境対応の“実行格差”が“発信格差”に直結している構図が明らかになった。
今回の調査は、環境対応の成熟度が高い企業ほど「実行」と「発信」が連動し、その活動が成果や社内外での広がりとして表れていることが確認された。先進企業では、事業全体、社内部門の連携による一貫性ある行動、取引先を巻き込んだ仕組み化が進んでいる。一方で、マーケティング活動における目標・KPI設定やグリーンウォッシュ対策といった“信頼性の担保”は十分とは言えず、多くの企業が「実行」と「発信」の両輪を信頼形成につなげるために模索している段階にある。
同社は「環境対応の発信においては、対策の中身そのものよりも、どのような姿勢で取り組み、どのように伝えていくか、が新たな焦点となりつつあります。その中心的な役割を担うのはマーケティング・広報部門です」とコメントした。

(日本物流新聞2025年11月10日号掲載)