初田製作所が飲料水備蓄分野へ進出
- 投稿日時
- 2026/10/09 15:30
- 更新日時
- 2026/10/09 15:33
従業員や地域を守る貯水機能付給水管
今年6月、初田製作所は配管用継手・フレキシブルホースメーカーのテクノフレックスとマルチアクアに関する技術供与契約を締結した。同製品は飲料水配管の途中に組み込むことで、水道を使うだけでタンク内の水が常に入れ替わり、断水時に必要となる飲料水を自然と蓄えておくことができるシステム。一見すると、初田製作所が主力とする消火設備とは畑違いの分野のように思えるが、齋藤氏は「当社が掲げるミッションは『かけがえのない人命、財産、文化を守る』。それは火災に限ったことではない」と語る。
「テクノフレックス様からは、非常時に必要なものを突き詰めていった結果、災害発生初期を生き抜くために絶対に必要な『飲料水』に着目したという開発の原点を伺っている。当社の理念とも合致しており、消火栓事業で培った水の知見を活かし、この製品を世に広める役割を担いたいと考えた」
マルチアクアは、密閉構造によって塩素が抜けにくく、長期間にわたって飲用可能な品質の水を維持する。さらに、電力インフラが途絶したとしても、付属の高圧フットポンプを接続・足踏みするだけで簡単に取水できる。「10回程度踏むと約1.5㍑の飲用水が確保でき、3階程度の高さであれば問題なく取水可能」という。
同様の貯水システム自体は他にもあるが、マルチアクアは圧倒的に小型かつ軽量だ。他社製タンクが25〜30㌔であるのに対し、マルチアクアのSタイプ(住宅用)の本体重量は約11㌔。長さも850㍉とコンパクトで、一人でも持ち運び・施工できる。戸建てであれば床下にも設置できるサイズであり、ハウスメーカーやマンションディベロッパーから高い関心を集めている。
■ペットボトル備蓄の限界を打ち破る
一方、こと生産現場に限ると、利益を生まず、公共の支援もある非常食や水の備蓄対策はどうしても優先順位が下がりがちだ。「とりあえずペットボトルを積んでおけば形にはなる」という本音も聞こえてきそうであるが、齋藤氏は次のように指摘する。
「一般的な備蓄水は初期費用が安く手軽だが、入れ替えの手間やスペースの圧迫は、ボディブローのように管理コストに溜まっていく。マルチアクアは一度導入すれば水道管のようにほぼメンテナンスフリーで使える」
導入企業の中には、BCP対策としてだけでなく、本製品を地域貢献に活用する動きも広がっている。災害時に店舗や施設を「地域の給水所」として開放することで、地域社会での信頼獲得や企業価値の向上にも繋がっている。
こうした企業や地域での活用の広がりに応えるべく、初田製作所は自社での生産・供給体制の確保に乗り出している。現在、新潟県阿賀野市で建設を進める新工場ではマルチアクアを生産予定であり、来年以降の本格稼働を目指している。
「HATSUTA=消火器の印象が非常に強いが、実は『防災』を起点に様々なソリューションを用意している。マルチアクアはそれをわかりやすく示す製品の一つになると期待している」
そう齋藤氏が言うように、同社は、消火設備で培った技術と「かけがえのない人命を守る」という不変の理念を胸に、「火」の専門メーカーから「総合防災企業」へと確かな飛躍を遂げようとしている。

(日本物流新聞2026年10月10日号掲載)