「IGTARP」採用の新機種
ナガセインテグレックスが新たな境地を拓こうとしている。代名詞である「超精密加工」実現のために、これまでなら大きな設置スペースやマシン重量を必要としていた。さらに「価格も高い」というイメージがあったが、それらを完全に払拭した。
メカトロテックジャパン2021で披露した門形成形平面研削盤「SGD-2010SLS2-Zero3」は、チャックサイズ長さ2000×幅1000?_ながら、クラス最小の設置スペース(幅7200×奥行2950ミリメートル)を実現した。モーターコアなどの大型金型・部品向けに開発した機種とあって、独自の非接触油静圧案内と新開発の高出力リニアモータ駆動の組み合わせによる平面精度を特長に挙げている。
初披露にあたって事前告知のチラシには、ユーザーが時間短縮した実績の一例として、大きく「加工時間が1/4」と書いた。各軸の最高速度を従来機に比べて、テーブル1.6倍(毎分40m)、前後軸4倍(6m)、上下軸3.3倍(2m)、砥石軸1.2倍(1600m)まで高めた結果だ。
加工点の静剛性と動剛性を2倍まで高めたのもポイント。砥石の対応幅を100?_まで大きくし、切込量を大幅に増やした。企画室の安澤寿洋氏は「こうした要素を積み重ねた結果、加工時間の短縮につながった」と話す。
大きな変化につながったのは、ナガセインテグレックスが2018年から採用している「IGTARP(イグタープ)」デザインだ。これは「Innovative inspiration」(革新的な発想)、「Gravity center optimization」など、6つの頭文字をとった思想で、統合的に具現化しているのは同社が初めてという。
「理にかなった理想的なカタチ。力が適切に伝わるうえ、軽量化と高剛性化も両立している。コラム幅2~4?bの従来機に比べて、明らかにサイズが違う。『精度はいいけど、大きさと重さが…』と、これまで二の足を踏んでいた方もびっくりするかもしれない」
■オプション豊富に
オプションも豊富に取り揃えた。-90~+45度(加工範囲±45度)の旋回設定ができる超精密ユニバーサルヘッドは、大型ワークの端面や傾斜部の加工に対応することで、ワンチャッキングによる能率アップを図った。
3Dタッチプロープによる機上計測も可能だ。ワークの高さを測定して、所定の寸法になるまで自動研削したり、3次元計測でマスターワークとの比較による良品判断を行ったりといったことができる。
安澤氏は「超精密加工システムとして、自在に形状創成加工する『スマートサーフアップ』、専用治具を使わずに磁性体ワークの歪み取り加工ができる『スマートアンジュレーションアップ』なども搭載できる。こういった機能は、大型ワークだからこそ工数削減の効果を発揮する」とした。
(2021年11月10日号掲載)