再エネ・省エネ推進事業補助金「ゼロカーボン」と「経営強化」を後押し
- 投稿日時
- 2025/11/06 09:00
- 更新日時
- 2025/11/06 09:00
大阪府八尾市
大阪府の八尾市は、「ゼロカーボンシティやお再エネ・省エネ推進事業補助金(事業者用)」の活用を呼び掛けている。同補助金は、太陽光発電設備の導入に補助率 5万円/kW(上限250万円)、蓄電池には補助率 3分の1(ただし20kwh未満:14.1万円/kwh、20kwh以上:16万円/kwhの3分の1を上限とする)を適用する。申請期間は12月19日(必着)まで。八尾市環境部環境保全課の山本貴浩係長は、「この補助金が活用できるかどうか、問い合わせいただくだけでも、環境問題だけでなくエネルギーコスト削減による経営強化を考えるきっかけになります」と述べ、気軽な問い合わせを歓迎している。問い合わせは、同事業コールセンター(06-6205-4944)または施工業者まで。
八尾市は2021年に、2050年度までの市域の二酸化炭素排出実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティやお宣言」を行った。この宣言に向けた主要な施策の一つとして、環境省の地域脱炭素移行・再エネ推進交付金(重点対策加速化事業)を活用し、同補助金を展開している。
重点対策加速化事業地域に採択されているのは、大阪府下で5市、全国でも171自治体に留まり、八尾市が先行して支援策を展開していることがうかがえる。
「八尾市内に事業所があれば、本社がなくても申請可能です。支店でも可能ですので、ぜひ活用を検討してほしい」と積極的な利用を猛アピールする。
太陽光発電設備の補助率は5万円/kW(上限 250万円)だが、パネルまたはパワーコンディショナーの容量の低い方を基準として上限を決定する点に注意が必要だ。また主な要件としては、自家消費型であり、発電した電力量の50%以上を自家消費していること、そしてFIT・FIPの認定を受けていないことが求められる。
また、BCP(事業継続計画)対策にも有用な蓄電池も、3分の1の補助(ただし20kwh未満:14.1万円/kwh、20kwh以上:16万円/kwhの1/3を上限とする)対象である。太陽光発電設備との同時申請も可能だが、蓄電池のみの申請は補助金の対象外となる。
対象となるのは、本年4月3日以降に契約の締結や導入をしたものだ。「すでに工事が終わった事例でも、対象期間内で要件に適合すれば申請可能です。工事が終わった事業者も活用検討を」と、遡及適用についても言及する。
同事業で補助金160万円を受け取った場合、投資回収が約7年で可能という試算もある。導入モデルについても、「自社設置はもちろん、リース方式やPPA(電力購入契約)方式による導入も対象となるので、選択肢が広く、柔軟な活用が可能です」としている。

八尾市環境部環境保全課の山本貴浩係長 手に持つのはゼロカーボンシティやお推進協議会キャラクターの「はちまる」
「じゃまくさい手続き」をサポート
コールセンターで利用を促進
一般的に、特に小規模事業者にとって、補助金・助成金は手続きが複雑で申請をためらいがちである。八尾市では、その手続きの簡素化と利用促進に注力している。
まずは施工事業者(八尾市外業者でも可)に相談することが重要だが、八尾市はコールセンター(06-6205-4944)を設置してサポートを強化している。
こうした支援を活用し、正木建設(大阪府八尾市木の本)は、2024年度に太陽光発電設備と蓄電池の両方を自社購入で導入した。同社はかねてから固定費の見直しやBCP対策、さらには社用車の電動車化を見据えており、本補助金の情報が導入の決定打となった。導入後の具体的な効果として、次の「3つのメリット」が挙がる。(1)コスト削減効果:購入電力の大幅削減。今年8月の使用電力量が、前年同月比で98.2%減を達成。(2)BCP強化効果:蓄電池の導入により、災害時などにパソコン、サーバー類及びエアコン1台を約7営業日稼働させることが可能に。(3)職場環境改善効果:太陽光パネルの遮熱効果により、体感的に夏場の涼しさを感じた――。
同社総務部の正木幸世さんは「当初、煩雑なイメージを持っていた申請手続きも、市や施工会社に相談しながらスムーズに進めることができました。今後は、自社の導入経験に基づいた経済効果などのメリットを、顧客にも伝えていきたいです」と、補助金活用の好循環に期待を寄せる。
山本係長は脱炭素に関わるようになってから「経済活動とゼロカーボンの両立が課題に感じる」という。「多くの人に補助制度を利用してもらいたい、という思いは各自治体が持っています。その中で八尾市では『じゃまくさい手続き』を如何にサポートしていくか、知恵を絞っています」と語る。八尾市は貸工場や小規模事業者が多く、太陽光発電の普及には課題もあるが、「補助を活用して設置していただく事業者が増えるとやりがいを感じます。問い合わせだけでもぜひお願いします」と訴えた。
このほかにも、八尾市は「ゼロカーボンシティやお推進協議会」を設置し、啓発イベントやセミナーなど様々な活動を展開している。「ぜひ同推進協議会に参加いただき、いろいろご意見を交換しながら、共にゼロカーボンを考えていきたいです」と締めくくった。
(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)