協力企業とのネットワーク構築推進
「自動車関連企業にどのような技術をもっている会社かを認知されていることは、SIer事業を進めるうえで大きなメリット」。工作機械メーカーの豊和工業は、昨年参入を果たしたロボットSIer事業についてそう話す。
SIer事業への正式参入こそ昨年だが、動き出したのはさらに前のタイミングだ。2015年にSIer事業について調査をはじめるとともに、同年に設立された「ロボット革命イニシアティブ協議会」へ加盟。工作機械事業でロボットによる自動化の経験値を既に積んでいたこともあり、自動化ニーズの高まりを背景に、事業化へ向けた検討を進めた。17年にプロジェクトチームを発足すると、さっそく大手ミッションメーカーから引合いを獲得し、加工ライン向け搬送システムを2ライン納入。19年には機械事業部内に「SIerチーム」を編成し、満を持して、正式に事業としての取組みを開始したというわけだ。
自動化システムの提案として力を入れるのは、多関節ロボットを用いた爪の自動交換が可能な「AJCシステム」。AJC(Automatic Jaw Changer)対応チャック、爪交換用ハンド、爪ストッカ、測定機器などの要素で構成されており、自動化を想定していない旧式のNC旋盤へも導入が可能という。
システム提案に先立ち、実際に同社では、自動化システム「リビルド」を旧式の旋盤と多関節ロボットを用いて社内に構築。AJC対応チャックのフィールドテストを兼ねた耐久試験を実施している。同システムは扉の開閉、プログラムナンバー入力などのボタン操作、モード切替を行うキー操作、ワークの着脱やチャック爪の交換、さらにはマグネットハンドに持ち替えての切りくずの排出までを自動化できるという。同社も「最新設備を導入するのではなく、既存設備でも十分に自動化できることを同システムを通じアピールしたい」と意気込む。
■豊和工業というプラットフォームを構築
SIer事業の営業活動を本格化する計画だったという本年。7月にはロボットテクノロジージャパン2020で、自社のマシニングセンタやパワーチャックを組み合わせた自動化展示を構想していたものの、新型肺炎の影響で同展が中止となるなど思うような活動ができないでいる。
とはいえ、SIer事業の今後はしっかりと見据えている。「自社のSIerチームだけでは、受注が増加した場合の対応に限界がある」と同社。対応の幅を広げるため、協力企業を増やしてネットワークを構築し、分業制にするという仕組みを構想しているのだという。「つまり、豊和工業というプラットフォームを作り、その中に人や企業を集めSIerとしての役割を果たしていくということ。例えば、システム全体の設計を当社SIerチームが担当し、必要な要素機器やシステム構築を協力企業へ依頼するといった形を考えている。さまざまな協力企業とネットワークを築き上げる事ができれば、顧客要求に応じた最適なシステム提供が可能となる」(同社)。
(2020年7月25日号掲載)