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ダイキン工業 油機事業部、長寿命フィルターでオイルコン省人化・省エネ

投稿日時
2025/06/04 09:00
更新日時
2025/06/04 09:00
オイルコン用長寿命フィルター「ラクフィル」

メンテナンス、2週間に一度から年1回に

「エコリッチ」や「スーパーユニット」など省エネハイブリッド油圧ユニットや、機械の油・クーラントを冷却するオイルコンディショナー(オイルコン)など油圧機器を取り扱うダイキン工業・油機事業部。ダイキン独自の技術を結集し開発したオイルコン用フィルター「ラクフィル」は、年1回の交換で冷却フィンの洗浄も不要にする長寿命フィルターだ。

オイルコンは吸気面から工場内のオイルミストや粉塵を吸い込み、冷却フィンが目詰まりしてしまう。目詰まりは吸気量にも影響しフィン温度の上昇に繋がる。従来の標準エアーフィルターやロールフィルターは2週間に一度の定期交換が必要となる。また不織布フィルターが張り付き、油汚れが浸透してフィン自体の油汚れも進行してしまう。専門業者によるフィン洗浄や、部品の消耗、突発的な異常停止など生産ラインの停止にも繋がる現場のネック部でもあった。

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1回の交換で目詰まりやフィンの汚れを防ぎ、風量も長期間維持。フィルターは軽量で交換作業も簡単

ラクフィルは独自のマイクロ繊維で、1㍈のオイルミストをしっかり捉える。当て止めで冷却フィンとフィルターに隙間を設け異物の浸透を防ぎ、目詰まりしにくい構造だ。目詰まり低減がアラーム停止抑制に繋がり、故障を防ぐ。また風量を長期間保って、消費電力40%削減という省エネ効果も期待できる。

交換頻度年1回の「業界初」という圧倒的な長寿命を実現したのは、繊維をジグザグに折り込んだプリーツ構造だ。容量を最小限に抑えながら、従来に比べ吸着面積を45倍に最大化。油が吸着しても通気性が高い素材を用い、ジグザグ形状の内側には、タテ筋を入れるように樹脂を塗布している。「間隔を保ち、面同士が引っ付いて風が通らなくなることを防ぐ」とメイン開発技術者の技術部・三村拓也氏(以下同)。樹脂の厚みで高さを変え、折り込んだフィルターがV字になるように計算し、通気性を高めた。空気抵抗を最小限に抑えながらオイルコン本来の冷却能力も確保する。

従来のフィルターではオイルコン風量が、約2週間~1カ月で交換目安となる毎秒9立方㍍以下まで下がるが、ラクフィルは1年以上風量を維持。吸着した油をオイルパンで受け、床面に垂れないフレーム方式を採用した。現在ラインナップするオイルコンの全サイズに対応している。

「どろどろになったフィルターの交換作業は現場の重い負担。2週間に一度だったものが年に一回で済むメンテナンスフリーの『ラクさ』を体感してもらいたい。この吸着面積で吸気抵抗をここまで抑えられるのは当社だからこそ」と生み出した三村氏は語る。

目詰まり防止やメンテナンス工数削減は省人化にも繋がり、国内顧客に加え、人件費の高いアメリカでも売上げは上がっていると言う。

■部門を超え知見を結集

「フィンの油汚れや目詰まりの解決」がそもそもの目的で、たまたまフィルターの開発に至ったという。「電気集塵や遠心分離機、様々な方法を探ったが上手くいかず、フィルターに着目。フィルター寿命を伸ばすため部材の調達や性能試験など数十もの試作を作ったが、答えが出なかった」と模索の末に行き止まりに。

諦めかけた時に、油機だけでなく空調・化学事業が集まる淀川製作所内のテクノロジー・イノベーションセンターで、空調の熱交換器や化学物質のスペシャリストなど分野を超えて膝をつき合わせ意見を出し合ったことで、風向きが変わり、独自の繊維と形状によるラクフィルが誕生した。「様々な知見の結集により、限界突破して生まれた製品でもある」(三村氏)

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技術部兼テクノロジー・イノベーションセンター 三村 拓也

(日本物流新聞2025525日号掲載)