「人ありき」の現場を変える「ネジ締めデジタル化」
- 投稿日時
- 2024/11/22 18:00
- 更新日時
- 2024/11/22 18:00
「熟練工」×「ビジュアル先生PRO」
ロボットやFA装置が日進月歩の進化を遂げるなか、いまだ煩雑な工程や繊細さが求められる作業においては、人間の持つ感覚や判断力に頼らざるを得ない現場も少なくない。こうした「人が主役」の現場における大きな課題は、慢性的な人手不足と技能継承。そのいずれも解決に導くソリューションを、電動ドライバーにおけるパイオニアメーカー・ハイオスと電子部品サプライヤーの三喜電機、商社の成電社が打ち出している。
東京・八王子市に本社を構える三喜電機は、電子機器や半導体関連製品の設計から受託生産までをワンストップで請け負う。70年余りの歴史を誇り、クライアントからの信頼も厚い同社だが、生産ラインにおける問題点を抱えていた。生産部の太田恭央課長が語る。
「当社も以前は作業における手順書とチェックシートを活用して作業を進めていましたが、作業者ごとの手順のバラつきやシフト変更、引き継ぎのタイミングなどでどうしても不良が出てしまうケースが頻出していました。これを改善できないか、と思い着手したのが、作業手順書のデジタル化でした」
同社では誰が作っても同じ製品が出来るよう、実際の作業の手順を画像に落とし込み、注意点はハイライトや文字情報を活用し、デジタルマニュアル化。あたかも「紙芝居」のように1ページに必要最低限の情報を盛り込み、タブレットで見られるようにした。また作業の手を極力止めないよう、チェックはタッチパネルやフットスイッチで行えるように工夫している。
開発に携わった伊藤直弘技師が述懐する。
「最初はベテランから『そんなもの見なくても』という声もありましたが、実際に運用してみると歩留まりが大きく向上し、生産性の大幅な向上に繋がりました。また全ての製造品目の手順をデジタル化したことにより、ベテランも若手も『煩雑な作業でも戸惑うことなく進められる』と納得してくれました」
三喜電機が自社のカイゼンのために始めたマニュアルの電子化。その高い効果は同業他社から他業種まで広く伝わり、「システムとして販売して欲しい」という声が各所から上がった。こうして誕生したのが作業マニュアル作成ソフト「ビジュアル先生PRO」だ。
中小企業にも導入しやすい価格帯を意識し、1ライセンス8万9800円と破格の値段でリリースしたが、大手企業からの採用も相次ぐなど、現在は企業規模や業種を問わず導入が進んでいる。
■ネジ締め工程とのコラボも
群馬県を中心に電子部品からFA・ロボット部品まで幅広く取り扱う商社・成電社。基板実装や組立配線の受託製造も行う同社も、ビジュアル先生PROを導入した一社だ。太田市の同社製造拠点では 、作業者はモニターに表示された組立手順をスライドショーで表示させながら手際よく組み立てを行っている。
成電社の生産拠点でも活用されているビジュアル先生PRO(YouTube「ええじゃない課Biz」より)
「画面を見ながら作業を行えば、新人でもベテランでも知識や経験に依存することなく同じ組立作業ができるため、品質の安定化が図れます。また作業をしながら各工程で品質検査も同時に行うので、作業終了時には品質検査データを自動で作成できるなど、トレーサビリティの向上にも繋がっています」(成電社・田村浩之リーダー)
さらに成電社では、一歩先を見据えた提案を進めている。それがハイオスの電動ドライバー「熟練工」との連動だ。
「当社でも採用しているハイオスさんの『熟練工』は回転パルス数からトルク管理やエラー情報まで、多様なデータが取れるドライバーです。これをビジュアル先生PROと連動させることで、ネジ締め工程を可視化し、生産工程においてより有効なデータ活用ができます。また、ハイオスさんではドライバーやトルクレンチ用の計測器も多数出されています。こちらとの連携も容易に行えますので、より高品質なモノづくりが可能になります」(成電社・松本重幸部長)
現在、ビジュアル先生PROの開発元である三喜電機では、ビジュアル先生PROとハイオス「熟練工」ドライバー及び「PGドライバー」の設定マニュアルを作成中。すでにハイオス製のドライバーを導入している企業にも提案してゆく構えだ。同社・棟方勝紀常務が話す。
「単純な作業と思われがちなネジ締め作業ですが、昨今ではシビアな工程管理が求められています。ネジ浮きや斜め締めなどといった不良の検出はもちろん、トルク管理までデジタルで行えるハイオスさんの熟練工は作業の可視化、デジタル化に最適な電動ドライバーです。加えて、他の電動ドライバーと比べて圧倒的に軽量で持ちやすい点も魅力です。人が主役の現場における最適なネジ締めソリューションとして、ビジュアル先生PROとセットで提案していきたいです」
ハイオス「熟練工」ドライバーの活用で品質とトレーサビリティの向上を実現
(日本物流新聞11月10日号掲載)