日本EMC、越製30kW高出力レーザー機展開へ
- 投稿日時
- 2026/04/02 09:00
- 更新日時
- 2026/04/02 09:00
溶接・製罐のキクタ会長「職人の眼」が惚れた
ステンレス・アルミの高度な溶接・製缶加工を手がけるキクタ(兵庫県尼崎市)が、ベトナム・EMC社製のファイバーチューブレーザーCNC切断機を日本で初導入した。500A(外径508㍉)×6000㍉の長尺材に対応し、穴あけや45度の開先加工も可能という。導入後の性能評価を受け、同社の菊田一郎会長(日本EMC社長)は、齢80を超えて輸入販売会社「日本EMC」を設立。日本総輸入元として本格展開に乗り出した。背景には、関西でいち早くレーザー加工機を導入した「先駆者」としての目利きへの矜持と、新興国の技術躍進に対する驚きがあった。
「16歳で金属加工の世界に入り、職人としてやってきたからこそ、レーザーの凄さが分かった」。菊田会長は、初めてレーザー加工機と出会った約40年前をそう振り返る。1980年代、インテックス大阪でアマダ製のレーザー機を目にした際、「職人技では届かなかった仕事ができる」と直感。周囲の反対を押し切って導入に踏み切った経験を持つ。以来、アマダや独トルンプなどのハイエンド機を順次導入し、加工の高度化を追求してきた。
転機は2024年、知人経営者から「ベトナムに優れたレーザーがある」と聞いたことだった。菊田会長は単身ベトナムへ渡り、EMC本社やユーザーを視察。「発展途上国と思っていたベトナムが、レーザー加工では驚くほど先進的だった」と衝撃を受けたという。現地では、中国系メーカーの価格競争を背景に、当初から30kW以上の高出力機を投入し、技術的な「リープフロッグ(跳躍)」を狙う戦略が広がっているという。
■SUS200㍉切断可能機も
EMCの装置は、光源に中国・深圳のMaxphotonics製のほか米IPGや独トルンプなどを採用可能とし、駆動系には安川電機など世界的メーカーのコンポーネントを組み合わせる構成が特徴。制御プログラムはEMCが独自に最適化したアルゴリズムを搭載しているという。ベトナム国内の豊富な運用実績に基づき、加工条件やビーム制御を自社ノウハウに即して最適化できる点を強みとしている。これらをベトナムで組み上げることで、高い性能と価格優位性の両立を図っているという。
キクタとしては長期的な耐久性については評価を一定保留しているものの、価格は日本製・ドイツ製の半分以下であり、部品交換を前提としても十分なメリットがあると判断したようだ。
1月にキクタ本社で開催された内覧会では、最大出力30kWのファイバーシングルテーブルCNC切断機も披露。SUS60㍉の切断デモを実施し、100㍉級の厚板切断や45度の全面開先加工、鏡板加工など、重厚板金分野への対応力をアピールした。

内覧会で展示された様々なワーク
来場したベトナムEMCテクノロジー投資のホー・シー・フン社長は「ベトナムでは高出力機の運用実績が豊富で、最大出力80kWでSUS200㍉の切断に対応可能な機種までラインナップしている。耐久性にも自信がある」と強調した。
「良いものは、良い。それを日本の現場に届けたい」。80歳を超えてなお、新たな商機と技術に挑む菊田会長。日本EMCの第一号受注として、タンク製造などを手掛ける兵庫県洲本市のキドへの納入が予定されているほか、造船領域で引き合いが増えていると明かす。
菊田会長は日本EMCによる機械販売に加え、キクタでの受託加工という“ダブルウイング”で、国内の製缶・加工業界に新たな選択肢を提示する構えだ。
(日本物流新聞2026年3月25日号掲載)