山善・ロジス新東京、人機一体の改革で常に変われる倉庫実現
- 投稿日時
- 2023/09/01 09:00
- 更新日時
- 2024/08/19 13:21
住建拠点活用で地域密着の即納体制築く
1月、山善の12カ所目の物流拠点「ロジス新東京」が本格稼働した。2月には住建事業部の物流拠点として運用してきた岡山の拠点をツール&エンジニアリング事業部の小規模配送拠点(デポ)としても活用すると発表し、5月には「新ロジス大阪」の設置を発表するなど、2024年を前に物流拠点の強靭化を加速させている。最新の物流ソリューションで効率的な商品配送を実現したロジス新東京の特長と「物流CROSSING」戦略について、同社・ツール&エンジニアリング事業部戦略企画部の橋本睦副部長に聞いた。
橋本副部長とダイフクのシャトルラック
「もしもの時でもモノづくりを止めないための半自動倉庫をめざした」
橋本副部長はロジス新東京を設計する際にこだわったポイントについてそう述べ、「人材不足や人件費が高騰している今、自動化を強力に押し進めたほうがランニングコスト低減・生産性向上とメリットは大きい。しかし、停電などで物流が止まった時でも、モノづくりの現場は稼働している。配達できませんでは済まされない」と、ユーザー視点に立つことがアナログな部分を残す一因となったと振り返る。
一方で、人材に関する問題は深刻でもあり、従来の人海戦術式の物流システム運用も見直しを進めた。ハード面ではダイフクのマルチシャトルシステム「シャトルラックM」などを導入。シャトルラックMは一時保管や仕分け、順列出庫機能を備えた空間効率の高い名寄せ(荷揃え)システムであり、配送先別の保管・仕分けが人手を極力使わずに迅速に行える。
ソフトでは統合物流管理システム(LMS)と倉庫管理システム(WMS)、倉庫制御システム(WCS)をセイノー情報サービスと共同で開発。従来は拠点や事業部ごとに物流システムが異なっていたが、システムを統合することで物流データを一律で管理・取得できるようにし、より正確な分析ができるようになった。今後、自前のシステムを他拠点にも順次展開していくことで、全社での物流関連の分析や物流資産の適切なシェア体制を整えていく。
物流倉庫だけで終わりではないのが山善らしさだろう。コンセプトを「この倉庫にあるものすべての商品が山善で取り扱いできます」とし、ショールームとしても使用できるように庫内設計を施した。すでに数十社の来訪があり、来年には60人もの大規模見学会が予定されている。
「全自動倉庫に比べたらここはそんなにすごくはない」としながらも見学者が絶えない理由について橋本副部長は「単純にハイスペックな倉庫を目指すなら、自ずと導入する製品も決まってくる。しかし、実際の現場の多くはそれだけが指標ではない。現場ごとに異なる要求に合わせて様々なマテハン機器を検討しなければならない。当社も悩みに悩み抜いてこの倉庫を作った。ここに来てもらえれば検討内容や実際に稼働している製品を見ることができる。加えて、マテハン機器はどんどん新しい製品や技術が出てくるため、この倉庫は常に可変性を担保していくことを意識した。今後、AMRを試験的に導入したり、SKUが増えればシャトルラックの増設など選択肢を用意している。そうした時代に合わせて柔軟に変化していける倉庫づくりにも関心が高い」とみる。
シャトルラックの名寄せの様子。システム上でシャトルから出てきた箱とピックした箱の中身が一緒になるように並べられるため、人は目の前に来る箱の荷物とシャトル側の箱を照合し、荷物を移し替えればよい
■24年問題を乗り越え、物流を差別化要因に
山善は持続的な成長に向けて、22年度から24年度にかけて400億円の成長投資枠を設定。物流設備などへは100億円の投資枠を定めており、地域密着の小規模倉庫「岡山デポ」や「新ロジス大阪」の新設など、事業部をまたいだ物流CROSSINGの取り組みを加速させている。橋本副部長は「注文をもらったのに配送できない未来がすぐそこまで来ている。特にモノづくりが多く行われているローカルエリアを中心にそうした流れが加速していくとみられており、スピード感をもって対応しないと24年問題に飲み込まれてしまう。優先順位をつけて3年の間に流通基盤の足場固めを終えたい」とする。
そこで重要になるのが、大手路線会社に頼り過ぎない自前の物流配送環境を整えることであり、同社は全国に90カ所ほどある住建事業部の拠点の一部にデポ機能を持たせることで、足回りを強化する考えだ。「住建事業部が地場の運送会社と長く関係を築いてきた。これも山善の強み。そうした拠点にデポ機能を持たせ、地域密着でその地域に求められている商品の即納体制を築くことが、数年後大きな差別化要因となる」と先を見据える。
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(2023年8月25日号掲載)