「ハセガワにノる」コンセプトに
長谷川工業は11月19日、20日の二日間、心斎橋PARCOスペース14で、11月27日は品川グランドホールにおいて「HasegawaFES」を開催した。既存製品や新製品の発表に加え、長谷川泰正社長による事業説明、長谷川義高副社長によるラジオブース形式のトークショウなどを通じ、同社の取り組みを紹介した。
長谷川社長は「急激な伸びではないが、連結売上は着実に伸長している。はしごや脚立、作業台という最重要の商品群に加え、電動バイクや電動キックボード、キャンプ用品など、新しいカテゴリーにも挑戦しています。海外販売を強化したことも奏功しています」と挨拶で述べた。またドコモバイクシェアの広島地区にて車両提供を行っていることも発表した。
「ハセガワにノる」をコンセプトにした会場には、多くの同社製品が並べられた。メインの企画として、昨年に続いて製品の乗り比べを実施した。「『乗ればわかる、頼もしさ』を長期スローガンに、乗ってもらえば当社の技術力やこだわりが一番伝わると考えました」(担当者)という。振動特性や騒音特性も測定され、軋まず音も静かであることをデータでも提示した。
■アウトリガー付き脚立来春発売
注目を集めたのは、来年春に発売するアウトリガー付き脚立「RLH ハチ型」である。脚立の転倒事故をゼロにしたいという同社の強い想いが込められ、アウトリガーが標準装備されている。脚立の足自体がアウトリガーの役割を果たす構造で、通常の脚立よりも1.7倍倒れにくい設計となっている。また、今年9月に収納時厚みが15センチと「業界最薄」(2025年4月現在。同社調べ)の長尺スリム脚立「RL」も紹介された。畳んだ際にフラットになる工夫が施されており、重ねても収納しやすいのが特長だ。
さらに、来年春にラインナップを一気に52種類追加し、リブランドする作業台「ライトステップ」の初お披露目にも人だかりが出来ていた。ユーザビリティーが向上しただけでなく、手すりの桟を追加するなど安全強化も施されている。またライトステップなどの既製品にないサイズや仕様を特注できる「特注職人」のサービスも強化され、既製品、フルオーダー、カスタムオーダーの組み合わせにより、ユーザーに合わせて「痒いところに手が届く」(担当者)適切な提案が可能になった。
また、昨年発表された「HASE LINK」は、主要法人と同社を繋ぐ新サービスだ。在庫確認や発送状況の可視化を実現し、8月からは受発注の試験運用を開始。2026年中の運用開始を予定。BtoB版Amazonのようなプラットフォームだ。同社のインド人技術者が中心となり内製しているため、改善や機能追加をスピード感をもって行えるという。今回は一歩先を行くAI版のデモも実施され、音声入力とAI対応の可能性が示された。「今後はAIとの会話で受発注や見積もりも可能にしていきたい」(担当者)と語った。
インタビュー
長谷川工業 長谷川 泰正 社長
はしご・脚立も電動モビリティーも安全思想から

――たくさんの来場者が来ています。率直な感想は?
「2日間もありますし、はしごと脚立をメインにするという、決して派手なジャンルではない当社のイベントに、多くの方に興味を持って来ていただけるか心配もしていました。しかし、回を重ねるごとに徐々に定着しており、『昨年も来たよ』と言っていただける機会も増えてきました」
――本日のイベントのポイントは?
「『HASE LINK』は当社の大きな転機になります。主要法人顧客からの価格や在庫の問い合わせが大変多くあるのです。これは、主要法人顧客がその先のお客様から問い合わせを受けているということであり、お待たせするわけにはいかないとの強い思いから開発しました。まだ実装はできていませんが、AIによりさらに高速化、スムーズ化していきたいです」
――乗り比べも引き続き強化されていますね。
「製品を実際に体験すると自社の技術力に誇りが生まれてきています。この場だけでなく、工場見学に来ていただいたお客様にも体感してもらうなど、様々な場所で実施しています」
――事業の多角化を進めていますが。
「外部から見るといろいろやっているように見えるかもしれません。例えば、『RLH ハチ型』は、アウトリガー付き商品は重くて使いにくい。だから普及しないから転倒事故がなかなか減らない。だったら使いやすくして手に取ってもらおうというコンセプトですね。電動モビリティー事業も、安全な乗り方をしっかりお伝えしたうえで乗ってほしいという思いから生まれています。『安全製品を世に届ける』という企業理念のアウトプットの形が、たまたま多様になっただけだと思っています。若い世代からすると、はしご・脚立のハセガワではなく、電動バイクのハセガワになってきているかもしれません」
――来年創業70年を迎えますが。
「70年前はベンチャー企業だったので、いつまでもベンチャーの挑戦意識を失わないようにしたいです。はしご・脚立という祖業の足元を技術力で固めながら、『安全製品を世に届ける』という理念を実現する新たな挑戦も恐れずやっていきます」
(日本物流新聞2025年12月10日号掲載)