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ナッシュ、メンテナンスの内製化で生産性を向上

投稿日時
2025/10/28 09:59
更新日時
2025/10/28 10:05
直線化されたライン。まだまだ人手に頼る部分も多い盛り付け工程

自動化に向けて一歩踏み出す

冷凍弁当の宅配で急成長するナッシュ。2018年に事業を本格化した同社は、健康を「食」から支えるビジネスモデルで注目を集める。田中智也代表は、前職で葬儀紹介サービスの事業に携わった経験から、食から社会課題を解決したいと同事業を立ち上げた。プラットフォーマー出身ながら、自社工場を持ち、製造を内製化したのは、品質とコストを両輪で制御する経営哲学によるものだ。

一般のフランチャイズレストランでは、メニューの種類(SKU)はおよそ70。しかしナッシュの冷凍弁当は現在約100SKUを揃える。同じ味に飽きない日常食とするために必要だが、量産するには調理の手仕事と機械化をどう融合させるかがカギになる。

尼崎工場が稼働したのは2022年。コロナ禍で需要が急拡大し、いまや一日約10~11万食を製造する工場へと成長した。

だがその裏側では、次のフェーズ——ロボットと人が共存する自動化ラインへの挑戦が始まっている。

その旗振り役が、品質管理部設備課の李敞熙課長だ。もともと半導体業界でロボットメンテナンスを手掛けていたエンジニアで、食品は未経験。それでも今では「現場の要」だ。
「ソースの自動充てん機などは自社で開発して自動化できています。ただ、盛り付けはまだ難しい。同じ商品ならロボットで対応できますが、毎日3回メニューを切り替えるので、そのたびにプログラム調整が必要になるんです」と話す。製造スタッフは平均して1日に約200人。自動化が進む中でも、人の手は欠かせない。

■『壊れない工場』への転換

李課長がまず取り組んだのは、機械のメンテナンスの内製化だ。「以前は、機械が止まるとメーカーの修理を待つしかなかった。今は自分たちで復旧できる体制を整えています」。これにより、生産を止めない仕組みを構築し、顧客に負担をかけない体制を実現した。

S字に曲がっていた盛り付けラインを直線化し、センサー制御でクラッシュをゼロにした。様々な工夫で冗長構成として使われていた1ラインも稼働し、4レーンすべてがフル稼働となった。

さらに、従業員の安全対策も強化している。協働ロボットによるコンテナ積み工程では、エリアセンサーに加え、安全柵を設置した結果、生産性が一時20%低下。しかしながら、「人の作業を柵の外に移して動線を再設計することで、安全性を担保しつつ、元の生産性を取り戻した」と胸を張る。

環境対策もユニークだ。生ごみを砕き、せんべい状に焼き固めて処理する新システムの導入も進めている。

「香ばしい匂いがするんですよ」と李課長。乾燥によって体積を減らすだけでなく、臭気も抑えられた。さらに、AIカメラによる品質チェックや、フタを閉める前の弁当を撮影してQRコードと紐づけるトレーサビリティー強化も準備中だ。

「これまではトラブル対応とメンテナンス体制の整備に注力してきましたが、これからは自動化に本格的に踏み出します。1年後にぜひ、また見に来てください」と李課長は笑顔で語る。

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(日本物流新聞2025年10月25日号掲載)