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AMRと連携するロボット

投稿日時
2025/12/23 15:16
更新日時
2025/12/23 15:26
ダイヘンの大型構造物向けロボット溶接システム

溶接や繊細な組立、フレキシブル搬送も
国際ロボット展から

12月6日まで東京で開かれた国際ロボット展は過去最多の673社・団体の出展に前回より約8千人多い15万6110人が訪れた。中国企業の出展(同34社増の84社)が海外出展140社の実に60%を占め、それに伴いヒューマノイドロボットの展示が目立った。

造船向け溶接用協働ロボットの展示も目についた。ダイヘンはともに今春発売したロボット「FD-VC8」(8キロ可搬)をAMR「AiTran500」に載せ、移動溶接できることを初めて披露した。その理由について「我々の溶接は自動車向けがメインだったが、EVシフトの停滞などもあり造船が次世代市場として有望になってきている」と話す。世界の造船市場は国際貿易の拡大や燃料多様化、軍事需要の拡大などを背景に2030年にかけて成長が続くと複数の調査会社が予測する(年成長率は3,5~5,5%程度)。

ファナックの3キロ可搬の「CRX-3iA」は片手で溶接現場に持ち運べ(本体質量11キロ)、適当に置かれても自らセンシングして設置角度の入力などを不要にする。ユニバーサルロボットの8キロ可搬の「UR8Long」はリーチの長さ(パレタイジングでよく使われる20キロ可搬と同じ1750キロ)と溶接時の軌跡精度をウリにする。

10年ぶりに同展に出展したアマダは産業用ロボットでワークを設置・取出しをする自動ベンディング装置と、協働ロボットで同様にワークをセットする溶接装置をAMRでつないで全自動化した。この間、ロボットによるワークの反転、AMRによる15キロの段差越え、カメラによる3点計測で±0.2キロ以内での溶接精度補正を実現。「自動化ニーズが大きく広がるなか加工装置メーカーの視点で自動化を示したかった」と言う。

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AMRが運んできた曲げ加工済みワーク(手前下)を協働ロボットが溶接マシン「FLW 3000 ENSIS e」に受け渡す(アマダ)

■提案の幅増すSIer

ロボットSIerの提案力が高まっている。ロボットを使った切削・研磨・FSW(摩擦撹拌接合)に強いトライエンジニアリングはWAAM(ワイヤアークアディティブマニファクチャリング)やアームがワークを保持したまま穴あけ、面削、研磨、計測などを連続して行う「ロボットマルチプロセッシング」などを出品した。WAAMは溶接により一層ずつ積層造形するもので、これまでに水素燃料タンクの造形で実績をもつ。今回は圧縮強度を高めるため250㌔可搬のアームに8キロ可搬のアームを載せたロボットonロボット構造にしてローラー転圧を組み合わせた。「強度の向上を確かめ、半年~1年後に受注を始めたい」と言う。

スターテクノは、2m以下に高さを抑えたパレタイザー「PXT-1220A」を開発したスター精機と共同でやや大がかりな自動化システムを紹介した。大小2種の段ボールの組立て→小段ボール箱への商品挿入→大段ボール箱への小段ボール箱の挿入→ホットメルトで封入→パレタイズ――を実演。両社は「食品業界は人手不足が顕在化しており引合いが増えている」と期待する。三明機工は段ボール箱の解体・開封・折畳みを行う自動装置を実演したほか、ティーチングを学べる「デジタルトレーナー」(ファナックと安川電機のロボット向けの計2機種)を紹介。パソコンモニターに実在のものと瓜二つの3Dシミュレーションロボットが現れ、それを実際のペンダントで自由に動かすことができる。「デジタルトレーナーの中には物理演算が入っているので、掴んだものを放せば落下するといったことまでリアルに再現できる」と言う。

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スターテクノはスター精機と共同で大小2種の段ボールの組立てから封入・パレタイズまでを自動化するシステムを実演

クラボウは束になったケーブルから1本ずつ取り出すことを可能にする高速3Dビジョンセンサー「KURASENSE(クラセンス)」の新製品を紹介。使用するロボットは同社が輸入総代理店を務める米Flexiv Robotics社の7軸協働ロボット「RIZON」。人や物との接触を高感度に検知し、小型部品のばら積みピッキングも可能。「ここ2、3年はセンサー単体よりも装置として自動化したいニーズが一気に増えている」と手応えを話し、自動搬送車と協働ロボットをセットして部品のピッキングや移動を行うパッケージとして、プログラミングを含めて販売する。ヤナギハラメカックスも同じように繊細な動きを示した。FingerVisionの触覚センサーを内蔵するハンドを使い、プリント基板を幅方向に把持する。「板のタワミの変化を認識する技術で、薄板や柔軟素材の取扱いが求められる精密な組立工程などで大きな可能性を秘めている」と見る。

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FingerVisionの触覚センサー付きハンドを使って薄板を幅方向に掴んで搬送する装置(ヤナギハラメカックス)

■多様化する運び方

モノの運び方が大きく変わってきた。コンベヤを構成するローラーひとつ一つを独立制御する自動搬送システム「MDR」で知られる伊東電機は、新ピッキングシステム「RevoPick」を出品。商品の種類に応じて仕分けて緩衝する機能や重なり合った商品を突き上げて分離し確実にスキャンする機能を用意した。伊東徹弥社長は「2024年問題が喉元を過ぎたが物量が増え人手不足も深刻化している。当社のシステムならSIerさんがいなくてもユニットの組み合せで自動化ができる」とメリットを話す。

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新ピッキングシステム「RevoPick」を紹介する伊東電機の伊東徹弥社長

THKはリニアモジュールに高剛性LMガイドを採用した次世代リニア搬送システム「VTS」を実演。「変種変量生産に向くフレキシブルな搬送システム。既存設備が使えることを示すため、(立体配置した)下段をベルトコンベヤにした」と説明する。

eve autonomyは、10月上市の7軸協働ロボット「Yamaha Motor Cobot」などを披露したヤマハ発動機ブース内に出展。屋外対応の無人搬送サービス「eve auto」をヤマハ発動機の大型スカラロボットと連携し、自動で牽引台車に荷付け荷下ろしする様子を見せた。気になったのは参考展示の自動連結機能/後方安全機能/幅寄せ機能。一見地味だが、センサーを使って牽引台車と車両を自動で連結したりできる。「屋外搬送の自動化はできるのが前提となりつつある。今回展では前後工程とどう繋がるか、さらなる可能性を感じてもらえることを意識した」と先を見据える。

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牽引台車と車両の間にある黒いボックスが自動連結機能を持つユニット。後方のLiDARセンサーでパレットとの位置を確認しながらバックで連結する(eve autonomy)

(日本物流新聞2025年12月25日号掲載)