ダッソー・システムズ、進む医療分野のデジタルツイン
- 投稿日時
- 2025/07/17 09:00
- 更新日時
- 2025/07/17 09:00

臨床試験や研修も仮想上で
ダッソー・システムズは6月27日、「ライフサイエンス領域におけるバーチャルツイン」に関する記者説明会を都内で開いた。持続可能なヘルスケアシステムの構築に向けた中心技術としてバーチャルツイン技術を紹介した。
同社は本技術を「人間の身体のデジタルコピーであり、シミュレーション可能なモデル」と定義。これまで様々な形や文脈で収集されてきたが統合的な活用がされていなかった患者データを、バーチャルツイン技術に統合することで、「What-if」シナリオの実行を可能にする。
「マルチスケール・マルチフィジックス現象を統合する能力が当社の強み。本技術を使えば何らかの疾患があった際、臓器レベルで見ることも、僧帽弁のようなサブ臓器レベルで見ることも、細胞や分子レベルで見ることも可能になる」(同日本法人・代表取締役社長のフィリップ・ゴドブ氏)
脳疾患治療における薬剤分布をシミュレーションした事例では、同技術を活用することで脳脊髄液内での薬剤挙動を可視化でき、薬剤が注入部位から目標部位に達するかを定量的に解析・評価することが可能になった。従来は、薬剤を脊髄のどの部位から投与すると効果的かを非ヒト霊長類に対する動物実験で確認する必要であったが、本技術を使うことで倫理面の課題を解消すると共に、臨床段階への移行を迅速化することが可能になるという。
同社・ライフサイエンス&ヘルスケア業界担当ヴァイスプレジデントのクレア・ビオ氏は「患者体験の向上において、患者自身が利用の実験体になってはならない。自動車業界では95%の衝突実験が仮想空間上で行われている。本技術によって医療でも臨床試験や研修試験などが仮想的に行われるようになる」との考えを示した。
既に国内でも大手製薬会社などが同技術を使用し、市場に製品を届ける期間の短縮に取り組んでいる。同社傘下のメディデータ・ソリューションズの西基秀ヴァイスプレジデントは「今年3月に(独)医薬品医療機器総合機構から再生医療等製品に関するガイダンスが出されており、今後こうした取り組みが加速していくと認識している」と述べた。
(日本物流新聞2025年7月10日号掲載)