【国際ロボット展】ヒューマノイドロボットが随所に
- 投稿日時
- 2025/12/17 09:05
- 更新日時
- 2025/12/17 09:08
人の形は必要? 工場で使われるのは数年後?
ヒューマノイド(人そっくりの形状の)ロボットが多数そろい、協働ロボットはより実用性を増している。これらの多くにフィジカルAIが利用されている。従来のAIはデジタル空間でデータ処理や分析を行うが、カメラやセンサーを通じて情報を取り入れて現実世界で動きを補正するなどして自律的に作業できる。12月6日まで東京で開かれ、過去最多の673社・団体が出展した「国際ロボット展」で先端技術が披露された。
ヒューマノイドロボットが会場のあちこちで見られた。同展の開幕直前にソフトバンクとの協業を始めたことを明かした安川電機は、近未来のビルで働く人型「Torobo」(参考出展)がソフトバンクの無線アクセスネットワークを使って指示を受け、協働ロボットと連携して自ら配布物を準備する様子を模擬的に示した。
山善はAMRと一体化した中国AGI BOT社製ロボットが物流拠点でピック&ドロップする様子を見せた。人のように器用に動かすには大量のデータを蓄積する必要があるため来春、ヒューマノイドロボットを最大50台導入し模倣学習する「フィジカルデータ生成センター」をINSOL-HIGHと共同で首都圏近郊で稼働する。「このプロジェクトに10社ほどの参画を見込む。国内外でデータの蓄積が試みられているが、多様な業界が加わる事業は珍しい」と話す。26年度内にハード・ソフトのセットで製造業への導入を目指す。
IDECファクトリーソリューションズは中国ROKAE社製の車輪移動タイプ(両腕で7キログラム可搬)を出品したが、「中国から様々なヒューマノイドが提案されているが用途は限られる。まずは介護や医療分野のサービス系の仕事になる。その延長として工場で使われることになるが、3年ほど先になるのでは」と見る。
■実用性増す協働ロボット
「ヒューマノイドに関心はあるが、人の形である必要はない。重要なのは安全性」
テラダインロボティクスのグループプレジデント、ジャン=ピエール・ハサウト氏は会期中に開いた会見でそう話した。15年にテラダインの傘下に入ったユニバーサルロボットは18、15、8キログラム可搬の協働ロボットを今年リリースした。展示ブースで実演した「UR8Long」(8キロ可搬、手首が下向きだと10キロ可搬)はリーチの長さと軽さが特長。「パレタイジングでよく使われるUR20(20キロ可搬)と同じリーチ(1750ミリ)で本体質量44.7キロと20キロ減らした」とし、軌跡精度が高く、溶接や塗布に向くという。
ファナックもシリーズ最小で船舶内での溶接などに向く協働ロボット「CRX-3iA」(3キロ可搬、リーチ692ミリ)を出品。質量を作業者が片手で持ち運べる11キロに抑え、マグネットベースを使ってボルト固定を不要にした。「どこでも持ち運んですぐに設置でき、適当に置かれても自らセンシングするので設置角度の入力などは一切不要。センサーを使って自動で溶接個所を認識し、溶接経路を生成できるためティーチングも不要」と言う。
ロボットはハードよりもソフトの重要性が高まっている。テラダインやファナックは米半導体大手NVIDIAと協業する。ファナックは同社製ロボットにNVIDIA Isaac Sim(オープンソースのロボットシミュレーション用レファレンスフレームワーク)を利用し、実物と見まがうほどリアルな仮想工場でのデジタルツインを実現する。システム構築に強いテックスイートジャパンと協業する三明機工(静岡市)は、顧客工場の点群データを利用したシミュレーションでロボットシステムの垂直立ち上げに繋げてきたが、「来年12月に竣工する新工場ではソフトを加え、大型プラント全体を模擬実験できるようにする」と意気込む。

ファナックの片手で持ち運べるCRX-3iAはマグネットで壁付けできる。
(日本物流新聞2025年12月10日号掲載)