機能・安全・モノづくりをデザインで融合
長谷川工業は3月27日、高所作業の安全性を高めるアウトリガーを脚立本体に一体化した新製品「RLH ハチ型」を発売する。開発期間は3年。機能性、ユーザビリティ、プロダクトデザインのすべてに同社の技術と思想を盛り込み、「次世代のスタンダード」を狙う意欲作だ。
脚立は本来、昇降面方向には転倒しにくく、左右方向には倒れやすい構造だ。
脚立の上で作業する時は、昇降面の天板やステップに身体を当て安定させるのが正しい使いかたとされる。しかし実際の現場では、脚立を横向きに設置し、天板を跨いだり、座るなど、構造的に不安定な方向に力がかかる誤った使われかたが目立つのも現実である。
一方で、昇降面に乗る正しい使いかたでは、状況によっては作業面から身体が離れてしまい「使いにくい」という声も多い。そこで同社が着目したのが、倒れやすい横方向の安定性を高めるアウトリガーの一体化だった。
SG規格の安定性基準に準拠した社内試験では、従来脚立に比べ約1.7倍倒れにくく
「脚立の横方向に力がかかっても転倒しにくい」構造となり、高い安定性が確保できる脚立となった。
設計を担当した商品開発課の木下佳彦テクニカルアドバイザーは、「入社した35年前から後付けアウトリガーは存在していたが、アウトリガーを付けることで脚が4本から8本になり、重く、高価格だった、しかも実際の現場は完全な平面ばかりではないので、脚数が多いほど凹凸を拾い、不安定になることもあります。脚は少ない方がいい」と語る。
アウトリガー一体型脚立は市場に存在はしていたものの、特殊な構造のため特定の現場で使われ一般的には認知、普及されていない。
そこで木下氏は「一般的に使用され、馴染みある脚立の形状を保ったまま、脚部自体が開きアウトリガーになる構造」ができないか、と検討を開始した。
発想の背景には市場環境の変化もある。一般的な脚立の転倒事故防止として、脚立持ち込み禁止の現場も増え、片面昇降で天板に乗って作業するタイプなど、馴染みの少ない作業台しか使えないケースもある。
開発を指揮した商品開発課の杉木道明課長は、「ユーザーヒアリングでは、やはり『普通の脚立が使い勝手が良い』という声が圧倒的なことから、安全でも『使いにくい』と感じられる以上、安全作業台の普及には時間がかかると考え、使い慣れた脚立にアウトリガーを組み込む商品化を急ぎ、『アウトリガー付きなら脚立でも使用可』という新しい標準を創りたい」と話す。将来的には、天板を跨ぐ使用方法もアウトリガー付なら可能という認識が広がることも期待する。
■非伸縮アウトリガー構造採用
通常であれば、アウトリガーを片側だけ回転させて開くと脚の高さに差が生じ、差を埋めるために伸縮させる必要がある。今回採用されたのが、非伸縮アウトリガー構造だ。
RLH ハチ型では、アウトリガーの回転軸そのものが展開と同時に下方へ移動し、収納側と同じ接地高さになる独自機構を開発。
当初の試作機では、ロック解除後にアウトリガーを展開してロックをし直すツーアクションの機構だった。「ほぼ機構設計が固まった段階でしたが、ユーザビリティを考慮すると使用者にとって“ロックし直す”作業は『使いにくい』と感じ、操作のワンアクション化をお願いしました」と杉木氏は振り返る。
「設計者からの目線ではなく、お客様にとって使いやすさとは何かと言う視点で再設計し、コンマ数ミリ単位で何度も調整しました」と木下氏。こうしてワンアクションで操作できる機構に仕上がった。
同社はドイツのデザイン事務所と連携し、近年はプロダクト全体のデザイン統合も進めている。杉木氏は「当社はデザイン性の高い商品群の認知はあったものの、メイン商材である脚立やはしごに対して、職人さんから『信頼性』という潜在的認知がプロダクトに反映されておらず『Hasegawaらしさ』が弱かった。近年では部材形状や配色をロジカルに統一し、設計の標準化や生産性向上とも連動させています。ユーザビリティも重視し、例えば操作部は赤で統一、操作方法を詳しく説明しなくても直感的に操作方法が伝わる設計思想です」と語る。
シンプル、ユーザーの使い勝手重視、無駄を省くなど設計思想の統一もブランド構築の一環としていることから、RLH ハチ型は部品の細部まで配慮され、車載時に引っ掛かりにくく、嵩張らない形状にもなっている。「機構だけの設計だけに留まらず、部品の配置や配色など見えない部分にまで拘った。今回の開発を通じて設計者として“デザインも機能〟だと意識が変わりました」(木下氏)。
価格はユーザーにとって通常の脚立に後付けアウトリガーを付けるよりメリットがあるよう設定し、市場への普及を目指した。
「新規性、堅牢性、安全思想まで含めて『Hasegawaらしさ』です。『RLH ハチ型ってHasegawaっぽいね』と言われる製品に育てたい。10年後、これが脚立のスタンダードとなり、転倒事故0(ゼロ)が目標です」と両氏は語る。
(日本物流新聞2026年2月10日号掲載)