ガストーチ安全表示義務化、新富士バーナーのガストーチ「より身近な道具」に
- 投稿日時
- 2026/03/18 09:00
- 更新日時
- 2026/03/18 09:00
「安全の見える化」がもたらす市場健全化
近年、キャンプブームや「おうち時間」でのあぶり料理の普及に伴い、カセットボンベなどに接続して使用する小型ガスバーナー「ガストーチ」は身近な存在となった。一方で、粗悪な作りの製品による事故が多発しており、深刻な問題となっている。製品評価技術基盤機構(NITE)に寄せられた情報によれば、2019年度からの5年間に発生した事故129件のうち、製品不具合によるものは7割を超え、その多くが海外製または生産国不明の製品であった。

【写真左】生産部の山内さん
【写真右】営業部の犬塚さん
こうした状況を重く見た国は、昨年2月にカートリッジガス式ガストーチを液化石油ガス法の規制対象に追加。1年の経過措置を経て2月6日より、国の定める安全基準を満たし、第三者機関による厳正な検査に合格した証「◇PSLPGマーク」のない製品の販売が禁止された。
「当社の規制対象品は全てマーク付きに入れ替わっています」
そう断言するのは、燃焼器具を手掛ける新富士バーナーの営業部の犬塚智仁さんだ。同社は24年時点で市場への規制に関する案内を始め、昨年7月1日から◇PSLPGマーク付き製品の販売・店頭入れ替えを進めるなど、市場の取り組みを先導してきた。なぜ、これほど早く規制に対応することができたのか。それはガストーチの検査工程をまとめる生産部の山内秀介さんの言葉からうかがえる。
「今回の規制適用に合わせて追加で必要になった工程は、検査を通過した製品への◇PSLPGマークの貼り付けとレーザーマーカーによる品番・製造日の刻印のみです。我々としてはこれまでも全数に対し安全検査を独自に行なってきており、法改正によって仕事内容や意識が変わったということはありません」

暗箱でのガス漏れ検査。水没検査などを経た最終検査で、「蛍火を接続部やバルブ付近に当て、炎のかすかな動きから微量な漏れを確認する」(山内さん)
今回の規制は、同社にとって長年「当たり前」として積み上げてきた「万が一を起こさない」安全への取り組みの延長線でしかない。こうした信頼性の高いモノづくりの蓄積が、同社製品が世界最高峰・エベレストの登山隊やオリンピック/パラリンピック競技大会の聖火リレートーチの燃焼機構に2大会連続で採用される所以である。
■文化支える安全基準
今回の規制について同社は、消費者が製品の安全性を確認できないまま購入するといったことを防止できるとポジティブに受け止めている。「近年『越境EC』を通じ極端に安価な輸入品が流入しているが、画面からは製品の安全性は伝わらない」ため、新規制によってこうした不適合品が市場から排除されることで、健全な競争環境が戻ることが期待されている。
既に市場には変化が見られる。インターネット通販サイトでは◇PSLPGマークのない製品が急減し、店頭でも同社製品を中心に◇PSLPGマークが付いた物しか並んでいない。しかし、同社が真に重視しているのは単なる売り上げの向上ではない。犬塚さんは「安全性に疑いのある製品が排除されることは、事故による『ガストーチ=危険な物』というイメージダウンを防止することにもなります」と考えを示す。
「事故が一件でも起きれば、ガストーチという道具そのものに対する信頼が損なわれ、『炙り』などガストーチにまつわる文化が阻害されてしまいます。今回の規制とメーカーによる誠実な対応は、消費者が安心して製品を選べる環境を構築するための大きな一歩となります」
安全が「見える化」されたことで、ユーザーは不安を感じることなく、ガストーチを火起こしや料理の仕上げに活用できるようになった。今回の規制はメーカーと消費者の双方にとって、豊かな火のある暮らしを守るための防波堤となるだろう。

国の定める安全基準に合検したもののみ◇PSLPGマークが貼られる
(日本物流新聞2026年3月10日号掲載)